「企画」が「メディア」になるとき

こんにちは、修士課程2年の半田です。年末進行の様々とフィールドレビューの締切が重なり、本日3本目の原稿です。移動時間の合間を縫って執筆しています。

さて、この2年の新型コロナで、学園祭というものの形が大きく変わりました。東京大学でも、先月開催された駒場祭は2年連続のオンライン開催となっていました。今回はそんな形を変える学園祭の中で開催されている「10分で伝えます!東大研究最前線」という企画についてお話したいと思います。

今年の3月頃、理工系の博士課程にいる友人からメッセージが入りました。

「五月祭で10分間喋らない?」

世間がコロナ禍に包まれる前、2019年の五月祭に遊びに行ったときにその友人が登壇していた企画が、その「10分で伝えます!東大研究最前線」でした。
東大生たちが自分の研究分野について、最新の事柄や研究に使う機器の仕組み、実験の方法論などをピックアップして、「10分でプレゼンテーション→10分の質疑応答」のセットを朝から晩まで登壇者が代わり替わりひたすら繰り返すというなかなかディープな企画です。
こちらに講演テーマの一覧があるので、どんな内容が話されているのかなんとなく想像していただけるかと思います)

乖離しがちな研究者と一般社会の間に接点を設け、「研究の社会への還元」の一つの形を実現しているともいえるこの企画ですが、同時に学園祭の人気投票で部門ランキング入りもするなかなかの人気企画らしく、毎回聞きに来る固定ファンの方もいるそうです。

「東大で研究している人と直接やり取りできる貴重な機会」というようなことなのかもしれませんが、やはりここ2年は変化を強いられています。オンライン化です。

オフライン時には講義後に教室に残って質問し、先生に時間外労働をさせてしまっていた昔の私のごとく、講演者に出番が終わってもお話を聞きに行けたのが、オンラインでは難しくなり、質問もチャットで投げかける形式となりました。

さて、そんな「10分!」(「10分で伝えます!東大研究最前線」の通称)、先日の駒場祭で私も遂に初登壇を果たしました。
(誘われていたのが五月祭だったのですが、緊急事態宣言による延期で五月祭が9月開催となり、私の都合が合わなかったため駒場祭に登壇がスライドしました)

せっかくの機会なので講演者としてだけでなく、オーディエンスとしても企画をめいっぱい楽しもうと連日Zoomウェビナーに接続していたわけですが、接続しているだけで朝から夕方までいくつもの番組がとめどなく流れてくる感覚に、どこか既視感を覚えます。

――これ、テレビじゃん!

それまで人と人が向かい合ってアナログなコミュニケーションによって披露されていたコンテンツが、インターネットという電子的な手段で、(いつでも好きな時にコンテンツにアクセスできる「配信」ではなく)同時的に「放送」されている。もしかしたら私は、「放送局」が誕生する瞬間を追体験したのではないだろうか。と、そんな大きなことまで妄想してみたわけです。

しかし、この企画の面白いところはまだありました。登壇者として喋ると、活発にコメントや質問が飛んできます。どの講演も講演者それぞれの専門の内容であるにも拘わらず、です。

これはきっとつまり、従来のオフライン企画で形成されていたコミュニティ(固定ファン層)がそのままオンラインにも来場してくれていて、コメントがオンライン参加者のコメントも呼んでいるというそういう状況なのではないかと推察します(根拠はないので推察です)。

オンライン化で場所の縛りから解放され全世界に開かれ、たくさんの番組が同時的に提供され続け、秩序があり、しかし同時にオフライン企画時代のコミュニティが持つ力が活かされた双方向性もある。学園祭の「企画」がインターネット時代の理想的な「メディア」へと姿を変えた、コロナ禍がもたらした興味深い事象を見付けることができました。

「10分!」、次回は来年の五月祭にて開催されると思いますので、興味を持たれた方がいれば、ぜひご覧になってみてください。