博士課程の丁智恵です。今回は、7月4・5日に開催された韓国・高麗大学韓国史研究所主催のシンポジウム ‘New Approach to History through the Visual Media’ (映像とアーカイビング、そして新しい歴史構築)に参加してきました。
第1部の「映像資料の収集と活用、現況と課題」では、日本、フランス、韓国における映像資料のアーカイビングや活用、またメディアを用いた教育制度などについて議論されました。東京大学からは吉見俊哉教授、またフランスのGiusy Pisano氏、高麗大の許殷教授から報告があり、討論の際には、カタロギングをどう行うか、一度公共財となった資料が再私有財化してしまう問題にどう取り組むか、また大学で映像を含むメディアについてどう教育を行っていくべきかが話し合われました。
また、第2部では、ヨーロッパや米国、日本などで収集された、近現代の韓国史に関する貴重な映像資料が上映されました。その中には、これまで発見されたことがなかった1924年の映像なども含まれていました。また、1930年代につくられた日本のニュース映画『京城だより』なども上映され、当時のソウルの風景や人々の暮らしが伝わってきました。
2日目には、「映像と歴史:植民と帝国」、「冷戦と東アジア」、「分断と離散」というテーマで3つのセッションが開催されました。ここで全ての議論について紹介することは出来ないのですが、今回の試みは、韓国、日本、中国、台湾など東アジアの研究者たちがこういった問題について問題提起し、議論するという画期的なものでした。
これまで注目されることのなかった映像を用いて歴史を再検証するという試みが、今後もこういった東アジアの研究者のネットワーク形成を通じて活発化していきそうです。大学でのメディア教育や映像資料のアーカイブ化など、日本や韓国、中国の研究者や学術機関が協力し合ってできることはたくさんあるでしょう。