11月27日、記録映画アーカイブ・プロジェクトの第5回ミニワークショップ「1964年東京オリンピックと建築」が開催されました。
記録映画のアーカイブを活用して、毎回さまざまなテーマによって映像を用いた研究・教育の可能性を探っているこのワークショップですが、今回は2020年東京オリンピックをめぐる新国立競技場の建設問題がいまだ解決しない中で1964年の東京オリンピックと建築の関係を考える、という非常にタイムリーな企画となりました。
上映作品は、『国立競技場』(1958年)、『東京オリンピックニュース』(1962年)、『かわった形の体育館』(1964年)の3作品。『国立競技場』は、今年取り壊された旧国立競技場の新築時の状況を解毀(かいき)編・建設編・完成編の3部作で記録した作品で、今回は解毀編と完成編のみを上映しました。迫力満載の解体シーンに、場内ではどよめきが聞こえました。『東京オリンピックニュース』は、オリンピック前夜の東京を海外の参加国に紹介するために製作された英語版の作品で、完成したてのスポーツ施設だけでなく、観光スポットや当時の街の人々なども捉えています。今や貴重となった数々の光景に、皆さん興味津々の様子でした。『かわった形の体育館』は、世界的な建築家である丹下健三が設計した代々木第一体育館について詳しく紹介した作品です。そのユニークな構造と施工法を丹念に写しており、建築関係者の方々も熱心に見入っておられました。
上映後のトークは、明治大学情報コミュニケーション学部専任講師で都市・建築論を専門とする南後由和さんにお話をしていただきました。学際情報学府のOBでもある南後さんは、今回上映した3作品の背景となる当時の東京の都市計画や建築の特徴と、マスメディアでの取り上げられ方について、豊富な資料を用いて明快に解説してくださいました。さらに、1964年東京オリンピックと2020年東京オリンピックとの対比や、2020年オリンピックの課題なども都市と建築の視点から提示してくださいました。客席からの質問・コメントも活発で、上映作品が持っている社会的・歴史的な意味の理解につながる非常に充実したトークとなりました。
最後には、丹羽研の松山さんによるコメントの後、本プロジェクトのメンバーである吉見俊哉先生からアーカイブの重要性についてのお話があり、さらに運営を担っていただいている記録映画保存センターの村山英世さんからも一言いただき、盛り上がりました。映画ファンの方から都市・建築業界の方まで100名近いお客様にご来場いただき、記録映画の観客層の厚さを実感しました。
このミニワークショップは継続して開催しており、次回は来春の予定です。皆さまの積極的なご参加をお待ちしています。