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個人メディアと国際広報の時代へ

作者: Wang Le | 2019年12月13日Posted in: フィールドレビュー

最近激化している香港デモをめぐって、中国政府と香港の民衆はそれぞれの立場から製作した映像と文章を世界向けに発信しています。

中国政府はこのような世界向けの宣伝で繰り返して「大国の軍事力と経済力」をアピールしながら、「ナチス並のデモ隊の暴力」をクローズアップしています。この宣伝方法はついに民主主義各国の民衆が憤慨を覚えさせてしまいました。かえって、香港の若者たちは自らの視点によって、「返還後の経済的かつ精神的な苦しみ」、「独裁による市民の自由の喪失」と「香港警察にひどく被害されている市民」などといった弱者のイメージを作り上げて、世界中で同情を買おうとしています。

こうした中国政府による粗末な宣伝と「民主主義こそ正義である」という世界中で共有されている価値観に加え、ウイグル問題を含め西側メディアに猛烈に攻撃された中国のイメージが徹底的に邪悪な存在となってしまいました。このような米中貿易戦争激戦中の輿論戦で中国が完敗したあげく、YouTubeで視聴できる中国関係の映像の下には、その映像の内容と題材にもかかわらず、脅威論、崩壊論的な、多種多様な言語による悪評のコメントが数え切れなく存在しています。

しかし、例外もあります。一つはYouTubeにおける李子柒(Li Ziqi)というビデオブロガーのチャンネルです。李氏は実家である四川省綿陽市の山中の農村を舞台とし、そこで中国西南部農村の伝統的な衣食住の様子を動画化してWeiboとYouTubeで配信しています。李氏の動画は山中の風景、伝統料理と唯一の家族祖母との生活を捉えています。その中では、李氏はまるで工業文明から脱出したように、衣食住の材料がすべて自分で育てたり、山中の植物から取ったりするものです。なぜこのような動画を制作してネットで配信しているかについて、李氏は「祖母との二人暮らしの生活費のお金を稼ぐため」とインタビューで誠実に答えました。

このように、李氏のチャンネルの登録者数は752万人となり、CCTV(中国中央テレビ)の十倍以上となっています。海外で大人気となった李氏の存在がついに中国政府と国内のメディアに気付かれました。現在、脱工業化の田園生活を中心とする李氏の動画と正反対な宣伝路線を歩んだ共産党側のメディアCCTV、『人民日報』は、李氏の動画を「中国文化の対外輸出」の成功例として評価するようになってきました。『人民日報』は李氏の動画について、「彼女の作品が海外で人気となっているという事実そのものの意味を無視してはいけない。どんな文化であっても、受け手に受け入れさせるために、予め受け手の感情を動かせておかなければならない」と主張しています。

現在の中国では、政府の統制が一番弱いメディアであるインターネットでは自由経済が変わらず毎年凄まじい発展を遂げつつ、個人メディア産業もその全盛期を迎えています。このような環境の中で、小遣いの稼ぎ方ひいては主要な収入源として、李氏のような農村部出身の一般人も何人かをチームとして組んで一つの個人メディアのアカウントを運営することも簡単にできます。このような権威主義の中における自由市場経済から生まれた個人メディアは、国際広報の新たなあり方と可能性を示唆しています。同時に、権威主義的な政府では、このような自由市場経済の成果を生かすことによって、従来の広報体制を変革する方向性も見えるようになるのでしょう。