「桜の花の咲く頃に」視聴レポ

2013年4月19日(金)、東京大学本郷キャンパス工学部2号館92B教室にて、テレビアーカイブ・プロジェクト第13回「みんなでテレビを見る会」が開催されました。今回は「桜の花の咲く頃に~若者たちに寄り添って~」と題して、2005年にフジテレビで放送されたドキュメンタリー番組『桜の花の咲く頃に』を上映しました。ゲストには、番組を制作された元フジテレビプロデューサーで、現在は近畿大学教授の横山隆晴さんをお招きしました。

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この番組は、酪農と漁業の町、北海道別海町の高校生と教師に密着したドキュメンタリー番組です。

亡き父への想いを胸にバレーボール全国大会優勝を目指す女子生徒、
厳しい自然環境にも負けず、日々、新聞配達をする男子生徒、
教員採用試験にチャレンジし続けている先生、
家業の漁業を手伝いながら、看護師になる夢に向かって歩む女子生徒など…

悲しいことや辛いことを乗り越えながら、毎日をひたむきに生きる人々の姿に、会場は感動の涙で包まれました。きっと、日々を懸命に生きる人々の姿が自然に映し出されていたため、人々の悲しみや喜びがダイレクトに伝わって来たからだと思います。

実は、こういった映像を撮ることは容易なことではありません。そこには横山さん流の「ドキュメンタリー論」がありました。

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横山さんによれば、制作過程では企画書を作成することなく、とりあえずカメラマンと2人で現地に住み込むことから始めたのだそうです。そして1年4ヶ月の間、「この先何がおきるかわからない」という状況に悩み苦しみながらも、別海町の人々にそっと寄り添い続けました。

そこには「テーマに沿って予定調和的に番組を構成するのではなく、未知の世界に対し、悩み、その過程の中で共に進んでいきたい」といった想いがあったからだと横山さんは言います。取材も、全てアポなしで行われたため、はるばる100キロ以上も運転をし、出かけて行っても撮れないということが多かったそうです。

さらに、驚くべきことに横山さんは取材期間中、取材対象とほとんど交流することはありませんでした。インタビューは、滞在期間の最後の方に、1~2回行ったのみ。それ以外は、挨拶すら交わすことなく、彼らの側にそっと寄り添い、小さなデジタルカメラを回していたそうです。「たかがテレビの取材で、今という現実を過ごしている人を邪魔してはいけない」。横山さんの特殊な取材方法の背景には、こうした信念があったのです。

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独自の取材方法、ドキュメンタリーに登場する生徒や先生たちのその後の物語などに話が及び、会場と横山さんとのやり取りは非常に活発なものとなりました。そして、終了予定を1時間オーバー(みんテレ史上初!)してもなお質問が終わることがない程の盛り上がりをみせました。