ついに復活!I feel Coke!

こんにちは!新年度がはじまりました。今回のフィールドレビューはあっという間にD3になってしまった柳がお届けします。このあいだテレビをつけっぱなしにして他の仕事をしていたら、テレビからある音楽が流れて耳を疑いました。

「さわやかテイスティ♪ I feel Coke〜♫」

なぜ?!この歌が?!いま流れるの?!と思って思わずテレビの方を振り向いたら「令和版I feel Coke」CMが流れていたのです。感動。

出典:コカ・コーラ公式ウェブサイト(https://www.cocacola.co.jp/press-center/news-20230327-00

I feel Cokeは、コカ・コーラが1987年から約3年間オンエアしたCMシリーズで、CM業界では「レジェンド」として称されるCMです。80年代後半の日本、とりわけバブル時代の日本をどの資料よりもリアルに描いているからです。自由、ゆとり、活気、自然…このCMに表現された当時の空気感/雰囲気が懐かしさを超えて儚さまで感じさせるようです。私だって元々のI feel Cokeが流れていた時代にまだ生まれてもいないですが、CM研究をしている絶対に一度は目にするしかないこのCMを見ていると、勝手にバブル時代にノスタルジーを感じるくらいですので。

実はこのI feel Coke、日本のCMと全く同じ絵コンテで作られた韓国版もあります。88年ソウルオリンピックのスポンサーを務めたコカ・コーラがオリンピックCMの一環として制作したものです。びっくりするくらい全く同じ絵コンテを元に制作したことがわかる韓国版ですが(グローバル企業が同じ広告戦略で複数の国でCMを制作することは珍しいことではありませんが)、それもそれで80年代の韓国の空気感がどの資料よりもすごくよく描かれていて、これもまた(当時生まれていない私にも)ノスタルジーを感じさせます。高度経済成長期ならではの高揚感と民主化の熱気に包まれ、いろんな苦難を乗り越えてやっとオリンピック開催の世界舞台にデビューするぞ!という当時の韓国の若者の初々しさや情熱。異なる状況にある二つの国で同じ絵コンテの元制作されたCMですが、どの国にも響いています。これだけ見てもどれだけこのCMが「レジェンド」なのかがわかります。

左:日本版(80年代)I feel Coke /右:韓国版 I feel Coke(出典:各CM動画よりスクリーンショット)

さて、話を戻します。とにかく復活ありがとう!待っていました!のI feel Cokeですが、令和版と80年代のオリジナル版にはいくつかの違いが目立ちます。間違い探しをするつもりではありませんが、まず最も特徴的なのは瓶からペットボトルに変わったということでしょうか。今はもはや瓶のコカ・コーラなんてすごくこだわった手作りバーガー屋さんとかでしか見かけることがないですが、実は今のスタンダードになっているペットボトルのコカ・コーラが発売されたのはここ20年余りのことです。小容量ペットボトルのコカ・コーラは96年に発売されたのでオリジナル版に登場しないのも当たり前です。その代わり、オリジナル版には当時のスタンダードだった瓶と缶のコカ・コーラが映し出され、いまから見るとより「懐かしレトロ感」を感じさせます。

それに加わってもうひとつ。今回の令和版には「コカ・コーラ・ゼロ」も登場しています。そもそも令和版は「あなたはどっちの美味しさが好き?」キャンペーンの一環として制作され、「コカ・コーラ」と「コカ・コーラゼロ」両方が主人公であります。コカ・コーラ・ゼロがはじめて日本市場で発売されたのも2007年ですので当たり前の違いです。

一方、変わっていないものもあります。「場面」です。オリジナル版と令和版の間には30年以上のギャプがありますが、楽しく軽快に動く若い男女や街で笑う女子高生…そして片手にはコカ・コーラ!まさに「さわやかテイスティ」そのもののシーンが並びます。細かいシーンは変わっても、見せようとする場面と伝えようとするメッセージは変わってないことがわかります。

ではなぜ、わざわざ30年越しにI feel Cokeが復活したのでしょうか。CMのテロップをみると「変わらない美味しさ。」と「受け継がれた美味しさ。」が。その「受け継がれる」歴史を強調するために今回のキャンペーンにわざと80年代のI feel Cokeを復活させた意図が垣間見えます。一気にノスタルジーを刺激、30年前へと誘い伝統ある味を強調するとともに、時代に合わせて進化し続けるコカ・コーラの「いま」も伝えるのにI feel Cokeの復活がはまったと思います。(先の話になりますが、この「受け継がれた」コカ・コーラを象徴するかのように、令和版にはペットボトル、瓶、缶すべてが登場するのも個人的には見逃せないポイントです)

こんな短い30秒のCMにコカ・コーラの歴史がぎゅうぎゅうに詰まっているなんてすごくないですか?やはりCM研究って短い時間にぎゅーっと濃縮されているメッセージを読み取る過程が楽しいと改めて感じています。

出典:CM動画よりスクリーンショット

おまけに、令和版にはみんなで楽しく自転車に乗る、というシーンがありますが、なんと、みなさんヘルメットを着用しています。これは今年度から自転車のヘルメット着用が努力義務になったことを受けてのことでしょうか。そのときの社会のあり様だけではなく法律の変化もCMにどのように反映されるか、今後もウォッチしていきたいと思います。