インディーズレーベルが輝いていた時代

どのインディ(ーズ)レーベルから出ているのかをチェックして、CDを買った時期があった。

1990年代半ば。大きめの都市にはたいてい外資系のCDショップがあり、なかなかの人気だった。CD全盛の時代でした。

当時お気に入りだったのはUKもの。マッドチェスターやブリットポップ、ドラムンベースとか言われた流れのものをよく聞いた。

バイブルはロッキング・オン。増井修や宮嵜広司、田中宗一郎がディスクレビューを書いているというだけで、そのバンドのシングルを買ったりしていました。

彼らの音楽評にはインディレーベルやその周辺の話がちりばめられていることが多くて、その雰囲気を知るのが楽しかった。

影響されるままに、インディレーベルをみてCDを買うようになりました。

ラフトレード(ザ・スミス)、ファクトリー(ニュー・オーダー)、パーロフォン(レディオヘッド、ブラー)、アイランド(パルプ、クランベリーズ)、ゴー・ディスクズ(ポーティスヘッド、ラーズ)…。

何もわかっていない私でも勢いを感じていたのが、クリエーション。オアシスやプライマル・スクリーム、ライド、スーパー・ファリー・アニマルズ、ブー・ラドリーズと、これもアラン・マッキーのクリエーションなんだ、という感じでした。なんだかすげえなと。

だから、新宿で観た『クリエーション・ストーリーズ』はとにかく懐かしかった。

映画は、クリエーション・レコーズ(1983~99)創設者のアラン・マッギーの半生を面白おかしく描いたもの。

とにかく音楽が好きなパリピで、クスリもやりまくっていたけど、いい耳と強運に恵まれた人でした。

借金取りから逃げるため、事務所に散らかっていたマスターテープを段ボールに入れて逃げるシーンは、昔音楽はフローではなく、ストックというかパッケージだったよなあ、と感慨深かった。

特に印象に残ったのは、トニー・ブレアの労働党がアラン・マッギーを政治利用していく場面。

マッギーはブレアを信じたが、党(とメディア)はマッギーを信じなかった。

労働党の政策は結局ネオリベで、「労働者階級」が支えたクリエーションはなくなり、インディーズ・レーベルの時代も幕を閉じた。

そんなことを知らない私は、UKものから勢いや明るさがなくなり、CDショップから消えていく事態がたださみしかった。

(クールジャパンという言葉を初めて聞いた時、クール・ブリタニアを連想した人は多かっただろう)

レーベルの存在感などなく、アーティストとファンが直接つながるようになった今からすると、この映画は「デジタル前史」でしかないんでしょうが、なんか泣けました。

私は今も、ライナーノーツを読むために日本版のCDを買ってます。多分、ずっと買います。

1990年代が青春だった、博士課程の飯田でした。