その手がかりは、《日曜日》にある。

今回のフィールドレビューは、博士課程の松本が担当します。

今、世界中が直面しているコロナ禍。私たちはこの状況と付き合いながら、いかに日々の暮らしをのびやかに送ることができるのでしょうか。その手がかりを、「サンデー・インタビュアーズ」と名付けられた余暇活動に探ってみたいと思います。

私たちは今、どんな時代を生きているのだろう──。

サンデー・インタビュアーズは、この問いを探求する”ロスト・ジェネレーション”世代の余暇活動です。松本の参与観察の対象であり、自らも深く関わっているコミュニティアーカイブ・プロジェクト、『移動する中心|GAYA』によって運営されているワークショップ・プログラムです。

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、公益財団法人せたがや文化財団生活工房、特定非営利活動法人記録とメディアと表現のための組織[remo]の4者の協働によって、2019年から主に世田谷区内で展開しています。

この活動のユニークな点は、主に3つほどあります。

1つ目は、「8ミリフィルム」と総称されるオールド・ビジュアル・メディアのデジタル・アーカイブ『世田谷クロニクル1936-83』が活用されている活動だということです。84タイトル(約16時間分)の映像には、戦前から昭和50年代までのおよそ50年間にわたって市井の人々によって記録された《動く世田谷》が収められています。

2つ目は、活動メンバーが、”ロスト・ジェネレーション”と呼ばれる世代から構成されていることです。カメラのファインダーを覗き込んでいた撮影者の世代の観点からではなく、ファインダーの先にいた被写体の世代の視点でみる。すなわち、「子どもの成長記録」を写した8ミリフィルムを、大人になった当時の子どもたち(38-50歳ごろ)の視点で捉え直そうとしているのです。

3つ目は、「はなす」「みる」「きく」といった3つのステップをつうじて、それぞれの参加メンバーが「媒介(メディア)」として機能するように設計されていることです。例えば、非接触なコミュニケーションと対面的なそれとをゆるやかにつなぐ結節点となったり、個別での活動とグループでのそれとを接続する役割を果たしています。

私たちは今、どんな時代を生きているのだろう──。

レジャーや旅行、地域行事といったかつての《余暇》を撮影した記録を、社会学者でもない”ふつうの人々”が貴重な余暇の時間を持ち寄って語り合う。非正規化する雇用、多様化する価値観、人と人が距離を保たなければいけない状況下、上記の問いは、働き盛りの”ロスト・ジェネレーション”世代にとってより切実なものとなるでしょう。

私たちの暮らしの現在地を見つめ直す。その手掛かりが、《日曜日》にきっとあるはずです。

参照:

展覧会『世田谷クロニクル1936-83  84巻の8ミリフィルム、12人のオーラルヒストリー

毎日新聞『昭和の風景に思いはせ 世田谷区民の8ミリ映像集公開』(5/5追記)