山形映画祭で特集上映を企画しました!

皆さん、こんにちは。博士課程の森田です。7月のフィールドレビューでご紹介した山形国際ドキュメンタリー映画祭ですが、去る10月半ばに開催されました!今回は、そのご報告をしたいと思います。

山形映画祭では、コンペティションから特集上映まで、さまざまなプログラムが同時にいくつも開催されますが、私は今回、その中の一つの特集プログラムの企画を担当しました。題して「『現実の創造的劇化』:戦時期日本ドキュメンタリー再考」です。国立映画アーカイブとの共催企画として実施しました。

この特集では、これまで研究してきた戦時期日本のドキュメンタリー映画群の表現方法にフォーカスしました。当時の作り手たちは、国策の一環だった文化映画というジャンルに携わりながらも、イギリスのドキュメンタリー映画運動によって提唱された「現実の創造的劇化」の方法に取り組もうとしました。そのことに着目して、共通点のある日本作品と海外作品を組み合わせて紹介するという企画です。

イギリスの『流網船』や『夜行郵便』、日本の『小林一茶』や『或る保姆の記録』といった有名作から、『造船所』『知られざる人々』『炭焼く人々』『白茂線』『土に生きる』といった異色作まで、合計17作品を5種類のセクションに分けて上映しました。映画祭中盤の連休にあたる10月12〜14日の3日間、山形美術館の展示室に35mmと16mmの映写機を運び込み、臨時の上映空間を出現させました。

他のプログラムに比べて地味な内容のため、どれほどの方々に見に来ていただけるかと心配していましたが、めったに上映されない珍しい作品が多かったことから、幸いなことに予想を上回る集客がありました。客層も幅広く、とくに海外の方や若い方も関心を持ってくださったことが嬉しかったです。ほとんどをデジタル素材ではなくフィルム素材で上映したことも好評で、苦心して集めた甲斐がありました。

毎日1回ずつ、上映後のトークショーも用意し、第一線の研究者であるマーク・ノーネスさん、フィオードロワ・アナスタシアさん、岡田秀則さんにお話をしていただきました。また、サイレント映画の『流網船』『トゥルクシブ』という2作品の上映では、山形在住の作曲家である鈴木崇さんにバイオリンで生伴奏をつけていただき、とても盛り上がりました!

さらに、書き下ろしの論考・解説・図版を掲載した特集パンフレットと、オリジナルグッズの制作、そしてチラシやSNSによる宣伝活動と、開催当日までの数ヶ月間の労力を注ぎ込むことになりましたが、自分自身にとって、論文などの執筆とは異なる発見が多くあり、本当に貴重な経験となりました。研究対象に関してアカデミア以外から反響を得られたことは、今後の研究を進めていく上でも重要な参照点となりそうです。

そして何より、共催先の国立映画アーカイブの方々や映画祭事務局の方々をはじめ、多くの関係者や協力者の方々とのコミュニケーションを経てプログラムが成立するということを実感し、山形映画祭という場の素晴らしさをあらためて認識する機会となりました。

特集の詳細は下記に掲載されていますので、ぜひご覧ください!
https://www.yidff.jp/2019/program/19p9-2.html