さようなら平成、こんにちは昭和

今回のフィールドレビューは、博士課程の松本が担当します。ここでは、東京都世田谷区で実施されている8ミリフィルムのアーカイブプロジェクトについてご紹介します。

【ウェブサイト「世田谷クロニクル1936-83」トップページ(画像提供:穴アーカイブ)】

現在、8ミリフィルムや写真といったパーソナル・メディアのアーカイブが、大学や自治体、NPOや市民団体など様々な担い手によって活発に展開されています。世田谷区においても、公益財団法人せたがや文化財団 生活工房が中心となって「穴アーカイブ:an-archive」という8ミリフィルムのアーカイブが進められています。私は、その企画・運営にNPOの立場から深く関わりつつ、市民が主体となったアーカイブづくりのあり方を、メディア・デザインの観点から研究しています。

穴アーカイブとは、記録を残すという営みを、記録が残らないこと、残せないこと、すなわち、記録の不在(穴)から捉え直す反(an)アーカイブ的アーカイブの試みです。昭和30-50年代にかけて一般家庭用に市販されたはじめての映像メディア、8ミリフィルムに着目し、世田谷のまち、ひと、暮らしに光をあてています。2015年4月から始動しました。詳細についてはコチラをご覧ください。

【ウェブサイト「世田谷クロニクル1936-83」フィルムリストページ(画像提供:穴アーカイブ)】

2019年3月、「世田谷クロニクル1936-83」という特設ウェブサイトがオープンしました。このウェブサイトでは、およそ30名の方々からご提供いただいた84巻の映像がご覧いただけます。戦時中の人々、復興を遂げた街並み、高度経済成長期の生活。世田谷を定点とした15時間の無音のホームムービーは、観る者にさまざまなことを気づかせてくれることでしょう。

私たちはいかなる時代を生きているのか。「令和」という新しい時代を迎えるにあたり、あらためて過去を経由する。そんな迂回によってこそ、見えてくる現在地の姿があるかもしれません。さようなら、平成。こんにちは、昭和。