今回のフィールドレビューは、博士課程の松本が担当します。
“フィールドワーク”という言葉を聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべますか。フィールドワークとは、自然科学から人文・社会科学に至るまで、世界を探究する方法として多くの研究者が取り組んできた、学究的営為のひとつです。そこには、研究者が学ぶべきさまざまな「知」が蓄積されています。
そんな「知」を解剖し、ひろく紹介することをめざしたシリーズ書籍が古今書院から現在刊行中です。その名も『100万人のフィールドワーカーシリーズ』。このシリーズを企画したのは、フィールドワーカーのネットワーク、FENICS (Fieldworker’s Experimental Network for Interdisciplinary CommunicationS )。フィールドワークの方法や視点、思考、経験知などを相互に交換することを目的に発足したNPOです。
全15巻からなる本シリーズ。そのうち、松本も執筆者として参加している第15巻『フィールド映像術』(分藤大翼・川瀬慈・村尾静二編)を簡単にご紹介します。本巻は、映像についての理論編、制作編、応用編、座談会の4つのパートから構成されており、「フィールドワーカーが映像を活用するにあたっての注意点から、現地の人びととともにつくる映像、自然・動物を相手にした映像まで」が、領域や分野を横断しながらまとめられています。松本は、応用編のテキストの一つとして、市民参加型アーカイブづくりにみる、映像と人の協働のあり方について寄稿しました。以下、目次です。
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第15巻目次
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PART1 理論編 ―映像の学術的枠組み
1.フィールドにおける映像の撮影―歴史的・理論的背景から(箭内 匡)
2.学術映像の制作に向けて―文化科学・自然科学における映像制作の基本的問題(村尾静二)
PART2 制作編 ―フィールドと映像のさまざまなかたち
3.博物館映像学の観点からみた北極海における撮影の意義(藤田良治)
コラム1 動物目線のフィールド撮影術(渡辺佑基)
4.霊長類のフィールドワークと映像の活用法(座馬耕一郎)
5.南極湖沼に棲息する謎の植物を追って―映像を活用した調査・研究とその意義(田邊優貴子)
コラム2 自然特有の動きを収めた画像を人が認識しやすい動画映像に変換する(中村一樹)
6.音楽・芸能を対象にした民族誌映画の制作と公開をめぐって―エチオピアの音楽職能集団の事例より(川瀬 慈)
コラム3 観客に届く映像作品をつくるには?―原 一男監督の「ドキュメンタリー映画制作講座」より(小林直明)
コラム4 民族誌映画祭―同時代の現実が交叉する時空(伊藤 悟)
PART3 応用編 ―映像によるかかわりの創出
7.調査写真・画像から展示をつくる―現地と母国の市民をつなぐ応用映像人類学(高倉浩樹)
8.結びつける力―参加型映像制作の実践(分藤大翼)
9.メディアに還(かえ)っていく(松本 篤)
コラム5 機材選びに役立つ情報(森田剛光)
PART4 座談会 映像が切り拓くフィールドワークの未来(司会:分藤大翼)
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2016年5月9日現在、15巻のうち6巻が刊行された『100万人のフィールドワーカーシリーズ』。最新刊は、第13巻『フィールドノート古今東西』(梶丸岳・丹羽朋子・椎野若菜編)、第12巻『女も男もフィールドへ』(椎野若菜・的場澄人編)もまもなく刊行の予定です。
フィールドワークに興味がある、関心のあるテーマが本シリーズにあるという方は、いちど手にとってみられてはいかがでしょうか。ぜひ、フィールドワークをフィールドワークしてみてください。