漫画はどこから来たのか?

皆さんこんにちは。丹羽研究室M1の粟屋です。寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
時が経つのは早いもので、2012年になってからもう20日以上が経ちますね。
2012年が2011年以上に実りある年になるよう、今年も精進していきたいと思います。
さて、今回は引き続きブックレビューの第3回目を担当させていただきます。

私の場合、研究テーマは「漫画」ですので、海外において漫画がどのように研究されているかについて知りたいと思い、洋書を探していきました。
そこで出会ったのが、Emerging World of Anime and Manga
(University of Minnesota Press, 2006)です。各国の多数の研究者による日本の漫画・アニメの研究論文が掲載されており、日本の漫画やアニメがどのように世界に広がったのか? アニメとは何か?など、様々な視点から日本の漫画やアニメが論じられています。その中でも私が興味を持ったのが、ウェンディ・ウォン(黄少儀 / Wendy Siuyi Wong)氏による”Globalizing Manga: From Japan to Hong Kong and Beyond”という論文です。

香港出身のウェンディ・ウォン氏は現在、トロントのヨーク大学にてデザインやファインアートの分野にて教鞭を執っています。主に香港のビジュアルカルチャー(広告イメージやマンガ含む)に関する研究を行っている方です。その他、近年では中国のグラフィックデザインに関する研究も手がけています。

彼女はこの”Globalizing Manga: From Japan to Hong Kong and Beyond”にて、日本の漫画の起源と発展を日本の歴史に沿って説明し、さらに漫画がどのようなプロセスを経て各国(特に香港やアジア諸国)に流通したかについて述べています。

具体的には、1.Globalization’s Theoretical Issues、2. Another Center of Globalization、3. Manga in Hong Kong and Southeast Asian Countries、4. The Presence of Manga in Europe and North America、5.Conclusionという大きく分けて5章から成り立っている構成です。1章でグローバリゼーションという問題について提起し、2章では日本の漫画の起源と歴史を辿りつつそれがどのように国境を越え得たか(グローバル化)を説き、3〜4章では具体的に漫画がどのように各国(特にアジア)へ拡大したか、という流れで論理を展開しています。

この中で特に私が興味を惹かれたのは、漫画の起源に関する説です。

「日本の漫画の起源は『鳥獣戯画』などの中世絵巻物にある」という説を聞いたことがあるでしょうか?漫画の起源についてよく語られる説の一つです。ウォン氏も、概ねこの説を支持しており、江戸時代1700年代の半に”マンガ”という言葉が、葛飾北斎の作品『北斎漫画』をきっかけに広まったと述べています。その後西洋文化の影響を受けて漫画は発展し、戦後に手塚治虫によって手法・技術ともに確立されたとしています。

しかし、この「中世絵巻物起源論」に反論する説も勿論あるわけで、その代表的な方が漫画評論家の大塚英志氏です。彼はこの「中世絵巻物起源論」を真っ向から否定し、日本の漫画は国内で発展したものではなく、ディズニーアニメの延長でしかないという説を立てています。これは、現代の漫画の礎を築き「漫画の神様」と称される手塚治虫が、漫画にディズニーアニメの手法を取り入れたことで漫画の技法を完成させたことを根拠とするものです。

漫画の起源をめぐり、こうも真っ向から対立する説が存在するというのはとても興味深く、面白い話であります。

さて、少し話がずれてしまいましたが、今回ご紹介した本は冒頭で申し上げた通り、ウォン氏だけでなく、複数の研究者たちによる日本の漫画・アニメ研究が集められたものです。海外から見て日本の漫画やアニメが彼らの目にどのように映っているのかを知る手がかりになりますし、扱っている題材も手塚治虫からエヴァンゲリオンまで様々ですので、親しみも湧きやすいかと思います。興味のある方は是非目を通してみてください。

最後になりましたが、3名のM1によるフィールドレビューに最後までお付き合いただきありがとうございました!