DVD/BOOK『戦後史の切断面』

記録映画アーカイブ・プロジェクトは、2009年のスタート以来、数多くのワークショップを開催し、反響を呼んできました。その活動の成果をまとめた書籍の第3弾『記録映画アーカイブ3 戦後史の切断面 公害・若者たちの叛乱・大阪万博』が、2018年7月、東京大学出版会より刊行されました。

本シリーズの完結編となる第3巻では、戦後日本の転換点となった公害、若者たちの叛乱、大阪万博を記録映画から読み解きます。付属のDVDには、公害や大学闘争を捉えた記録映画、大阪万博のパビリオン内で上映された展示映像、岩波映画を通して戦後の記録映画の歴史をたどるオリジナル作品『夢と憂鬱』など、貴重な記録映画7本が初収録されています。

2012年の第1巻、2014年の第2巻に続き、足かけ6年でようやくシリーズ完結となりました。書籍とDVDがセットになったこの画期的なシリーズを通して、記録映画の保存と活用がさらに進んで行くことを願っています。メディア史や映画史に興味のある方々はもちろんのこと、戦後日本の歴史や社会、アーカイブに関心のある方々にも幅広くご覧頂きたいと思います。

丹羽美之・吉見俊哉編
『記録映画アーカイブ3 戦後史の切断面 公害・若者たちの叛乱・大阪万博』

東京大学出版会、ISBN978-4-13-003252-0、
発売日、2018年07月17日、判型:A5、320頁、本体:9500円

目次
序章 戦後史の切断面(丹羽美之)

第1部 映画のなかの公害
第1章 『水俣の子は生きている』(土本典昭)
第2章 〈不活動〉との共同――土本典昭『水俣の子は生きている』(1965年)(中村秀之)
第3章 問いと指差し――神馬亥佐雄と『汚水カルテ』の映像試論(角田拓也)
第4章 公害と記録映画――大気汚染から放射能汚染まで(鳥羽耕史)

第2部 1968・若者たちの叛乱
第5章 〈映画のビラ〉シネトラクト運動――岩波映画労働組合とその周辺(井坂能行)
第6章 日大闘争とグループびじょん(北村隆子)
第7章 叛乱の時代(長崎 浩)
第8章 68年と映像(筒井武文)

第3部 万博とアヴァンギャルド
第9章 記録映画から展示映像へ(坂口 康)
第10章 『1日240時間』と安部公房・勅使河原宏(友田義行)
第11章 パビリオンから見た大阪万博(暮沢剛巳)
第12章 大阪万博と記録映画の終わり――成長の時代と言葉の敗北をめぐって(吉見俊哉)

終章 記録映画保存センターの活動成果と今後の課題(村山英世)

DVD収録作品
『汚水カルテ』(1977年、24分)
『おきなわ 日本1968』(1968年、8分)
『’69・6・15』(1969年、10分)
『死者よ来たりて我が退路を断て』(1969年、64分)
『希望 光と人間たち』(1970年、18分)
『1日240時間』(1970年、10分 *ダイジェスト版)
『夢と憂鬱 吉野馨治と岩波映画』(2011年、122分)