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ある身体障がい者の生き方

作者: Horikoshi Rei | 2017年8月06日Posted in: フィールドレビュー

今回のフィールドレビューを担当する修士1年の堀越です。今日は自分がやっているアルバイトについて書きたいと思います。

私は、脳性マヒを患う身体障がい者であるSさんの介助のアルバイトをしています。友人の紹介で始めることになったのですが、初めて介助の様子を見に連れていってもらったときに障がい者の方(Sさんとは別の方です)が顔をくしゃくしゃにして目を細めながら、本当においしそうに煙草を吸っていたことをよく覚えています。それは今までに出会ったことのない表情でした。

 Sさんは自宅で一人暮らしをしていて、仕事の内容は食事、買い物、風呂、トイレ、着替えの補助、車イスの準備、片づけなど日常生活の身辺介助です。外出することも多く、上野で美術館巡りをしたり、代々木公園で行われているイベントに行ったりします。Sさんの趣味は音楽鑑賞で、棚いっぱいに並ぶテクノ・ミュージックのCDを、何種類ものアンプとヘッドフォンを使い分けて聴いています。また、Sさんはウサギを飼っていて、小屋掃除のあいだ外に出すのですが、そのときにSさんがウサギと一緒に寝転んで頭を撫でているのを見るのが私の好きな時間です(ちなみに私がウサギに触れようしても素早く避けられてしまいます)。

ここで障がい者の自立生活について少し触れたいと思います。研修のときにこの仕事は「介護」ではなく「介助」であると言われました。その意味するところは文字通り、障がい者は守られる存在ではなく、様々なサポートを活用していく主体的な存在であり、介助者はあくまでその補助をするというものです。社会から隔離された親元や施設から離れ、地域社会のなかで自らの生活を確立しようとする運動が1970年代から興ってきました。Sさんは30代初めに家を出て20年近く一人暮らしをしている自立生活の「ベテラン」で、地域で障がい者のための事業所も運営しています。そこでは自立生活を支援するプログラムや介助者派遣事業を行い、障がい者の手で障がい者の自立を促す循環が生まれています。

私が研究対象としているのはドキュメンタリー映像ですが、特に日常生活がその人の生き方や思想の表れとして映されているものに心惹かれます。相模原殺傷事件から1年が過ぎましたが、私は自分が体験したような煙草を吸う表情やウサギを撫でる姿を思い返しながら、障害の有無で人間に優劣をつけることがいかに無意味であるかを強く実感します。介助の仕事に少しでも携わる人間として自分にできることは、ある信念に貫かれた障がい者の生活のあり方を紹介することではないかと思い、今回のフィールドレビューとさせていただきました。