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写真誕生の聖地巡礼・イギリス編

作者: YOSHITARO INAMI | 2013年6月26日Posted in: フィールドレビュー

修士課程の井波です。写真を発見・発明した人を挙げよという問があったとき、みなさんはすぐに人物名が出てくるでしょうか。

19世紀初頭、様々な科学者が「光」をモノに定着しようと研究していましたが、感光物質を発見したニエプス (仏:Joseph Nicéphore Niépce)、ニエプスの共同研究者でダゲレオタイプを考案し、写真の産業化に貢献したダゲール (仏:Louis Jacques Mandé Daguerre)、同時期のイギリスでネガ・ポジ法を考案したタルボット (William Henry Fox Talbot)、この3名を挙げられれば、ベストな回答といえるでしょう。

その中から今回は、タルボットによる写真発明の地をレポートしたいと思います。

[[ Lacockへ ]]
London Paddington駅から西へ、特急列車で約70分。Chippenhamで下車し、そこから路線バスで約15分。

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そこにタルボットが住んでいた村、Lacockがあります。

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人口約1000人というの小さな村で、1944年からNational Trustによって所有・管理されています。村には中世から18世紀までに建築された木造と石造りの建物しかなく、1800年以降に建てられた建物はありません。今でも映画やテレビドラマの撮影ロケ地としても人気がある場所です。村民は古い住宅を何回もリフォームして住んでおり、村内の地下には電気・上下水道・ガス・電話・テレビ・インターネットといったライフラインもしっかり通っています。

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ここの村にあるLacock Abbeyと呼ばれる大邸宅に、タルボットは住んでいました。

[[ Lacock Abbey ]]
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Lacock Abbeyはもともと修道院として1232年に建てられた建物で、1540年以降は住居となり、後にタルボット家の邸宅となりました。内部は16世紀から18世紀の調度品や書物などタルボットが生活していた空気をそのままに保存されています。

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1835年にタルボットがテストで撮影した「窓」(画像左)も当時そのまま。

[[ Calotype ]]
ダゲールが発明したDaguerréotypeは、金属が支持体で、シャープで鮮明な画像が得られる反面、1回の撮影で1枚の写真しか作れず、複製機能を持っていませんでした。それに対してCalotypeは、画像はシャープでないが、紙ネガを作って原板とすることで、同じポジ像をたくさん複製できるという、ネガ・ポジ法の特性を持っていました。このネガ・ポジ法の原理はその後急速に発展し、現在まで続くアナログ写真の”ネガ”と”プリント”の関係の礎となりました。写真の複製芸術としての機能はタルボットによって生み出されたと言えるでしょう。

[[ The Pencil of Nature ]]
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またタルボットは、Calotypeが写真を量産できるという特性を生かし、1844年に世界で初めての写真集『The Pencil of Nature』を発刊しました。この写真集は6分冊・200セットほどしか作られませんでしたが、写真を写真集として出版物化したということも彼の功績の一つです。ちなみに完全な形で残されているものは世界で12〜15セットといわれていますが、そのうちの3セットは日本の美術館や研究機関にあるようです。

[[ The Fox Talbot Museum ]]
Abbey の敷地入り口にはThe Fox Talbot Museumがあり、タルボットに関する資料と写真の発明の歴史に関することが展示されています。

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村にはティーショップやバーなどがあり、イギリスの片田舎をのんびり体験できる場所です。

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最近では、村の入り口にパーキングエリアができ、”Cotswolds”へのバスツアーの一部に組み込まれる機会が増えているようです。また、お隣の街は世界遺産のあるBathですので、あわせての観光もおすすめです。これからイギリスへ行く機会があった際は是非訪れてみてください。