特任研究員の丁智恵です。私は現在情報学環に新設された「メディアスタジオ」の管理や運営を担当しており、撮影や編集の基礎を学ぶトレーニングワークショップの開講や、映像制作実習の授業のサポートなども行っています。今回は、今年度4月〜7月に、情報学環教育部「メディア・ジャーナリズム論実験実習Ⅳ」と学際情報学府「メディアスタジオ実習Ⅰ」の合同授業(担当:水島宏明先生)のサポートをしましたので、こちらの授業の内容や完成作品についてご紹介します。
この授業ではまず、受講生たちが自身の関心テーマに沿って企画書を書いてきて、プレゼンテーションを行いました。そして、それぞれの関心に沿ってグループ分けが行われ、話し合ってグループのテーマを決め、取材の計画を立てていきました。
またこれと同時並行で、撮影や編集の基礎を学ぶトレーニングワークショップを受講しました。受講生の多くは、ビデオカメラを手にしたことのない初心者から始め、当初はぎこちない様子でしたが、回数を重ねるごとに撮影や編集の技術もみるみるうちに上達していきました。
実際に取材と撮影が始まると、授業外の時間にグループで打ち合わせをしたり、取材先にアポイントを取ったりと、大忙しになります。授業では毎回、水島先生の指導やアドバイスを受け、グループで話し合いをしながら、それぞれのテーマに対する問題関心を深めていきました。
また、今回の実習では、情報学環本館に新設された「メディアスタジオ」の機材や空間を利用して、制作を進めました。
撮影した場面をもとに、構成を練り、自分たちが伝えたいことを伝えるにはどう編集すればいいか、話し合いながら作業を進めました。編集した映像を何度もグループで検討しながら、意見を出し合い、また編集作業に取り組むという日々が続きました。
そして、とうとう作品が完成。7月6日には公開上映会を開催し、授業を受けた学生たちの作品、4本が上映されました。以下にその作品のご紹介をします。
「片腕の伝道者」(高島瑞希/神野拓哉/佐々木瞳/須賀健斗/竹内拓海)
社会人として働きながらNPO法人で同じ障害を持つ人の支援を行う男性を描いた作品。彼は技術者・開発者と組んで筋電義手の開発に取り組み、「伝道者」と呼ばれています。
「貧困の連鎖−運命に抗う」(宮内理伽/加藤真由/中森千裕)
生活保護世帯出身の東大生に照明を当て、格差の進む現代日本社会の現実を直視した作品。
「見えない障害−「どもり」と向き合って生きていく」(福岡由夏/田中瑛/湯浅英俊/櫻井暸)
成人のおよそ100人に一人が発症するという吃音症。東京に住む吃音と共に生きる女性ー障害を通して自分を見つめ直そうとする彼女の日々を追いかけました。
「霞ヶ丘団地最後の一年」(富樫康子/岩根佳奈子)
2020年東京オリンピックの新国立競技場建設に向けて取り壊される都営霞ヶ丘アパートを舞台に、残りの日々を過ごす住人たちを見つめました。
今回の授業では、受講生の皆さんの意欲と吸収力の高さには目を見張るものがありました。また、毎回遅くまで熱心に指導していた水島先生の姿も大変印象的でした。今回の授業を通して、自分自身も非常に多くのことを学びました。
今後も、情報学環・学際情報学府では映像制作の実習授業が開講される予定です。また関連の公開イベントも実施されますので、ご関心のある方は、ぜひともご参加ください。