駒場のマス・メディア論

「NNNドキュメント」の制作チームと行っている共同研究の一環として、2013年10月から東京大学駒場キャンパス(教養学部の1・2年生向け)で、テレビ番組を使った実験的な授業「マス・メディア論ーNNNドキュメントで見る現代日本」をはじめました。

この授業では、毎回テーマ別にNNNドキュメントの名作・話題作を上映し、番組制作者をゲストに招いてお話を伺っていきます。テレビ番組を教材にして、現代日本とそれを見つめてきた現代ジャーナリズムの両方を一遍に学んでしまおうという欲張りな授業です。

10月22日の授業では「農村」をテーマに、NNNドキュメント’11『夢は刈られて〜大潟村・モデル農村の40年』(秋田放送)を上映し、この番組を制作した石川岳さんのお話を伺いました。

大潟村への入植、減反と青刈り、米の自由化など、番組では農政に翻弄され続けてきた農民たちの姿が描かれています。石川さんによれば、地元の秋田放送は3人の制作者がリレー走者のようにバトンを受け継ぎながら、大潟村の農民たちの姿を記録し続けてきたそうです。日本の農業をどうするのかという問題は、現在のTPPの議論にも直接つながる重要なテーマです。

毎回レポートが課される厳しい授業ですが、学生たちの関心は非常に高く、定員200人の教室はいつも超満員です。今後もこの授業では、沖縄、原発、エスニシティ、性、医療など、多種多様なテーマを取り上げることになっています。テレビ番組がもつ「時代の証言者」としての力を最大限に活かしながら、現代日本や現代ジャーナリズムの諸問題について学んでいく予定です。

2013年度「マス・メディア論」シラバス

(1)イントロダクション

第1部 豊かさの幻影
(2)農村:「夢は刈られて 大潟村・モデル農村の40年」(秋田放送)
(3)沖縄:「激突死」(日本テレビ)
(4)原発:「ガリバーの棲む町 地域と原発の27年」(福島中央テレビ)
(5)核:「放射線を浴びたX年後 ビキニ水爆実験、そして…」(南海放送)

第2部 差異を生きる
(6)エスニシティ:「いで湯のロリータ」(中京テレビ)
(7)障害:「明日をつかめ!貴くん 4745日の記録」(日本テレビ)
(8)性:「カレシのおっぱい」(読売テレビ)

第3部 メディアの功罪
(9)災害:「解かれた封印 雲仙・大火砕流 378秒の遺言」(日本テレビ)
(10)事件:「妻に語りかけた14年 松本サリン事件が終わった日」(テレビ信州)
(11)医療:「シリーズ命の値段 がん患者、闘いの家計簿」(札幌テレビ)
(12)戦争:「戦争を知っているか1 原爆資料館」(広島テレビ)

(13)ミニシンポ