映画評連載、はじめました。

こんにちは。博士課程の森下です。今年度初のフィールドレビューは、まさかのトップバッター。突然すぎてネタが思いつかない今回は、最近新たに始めたメディア活動についてお話します。

色んなご縁があって、林香里先生もご愛読されている創刊121年を迎えた老舗雑誌「婦人之友」に、1月号から隔月で映画評を連載しています。ちょうど先日12日に発売になった5月号が、連載3回目。隔月なので年6回、基本は1回に2本の映画を紹介し、そのうち1本は発売日近辺に劇場公開される新作、もう1本は旧作でも可とされています。約1,500字の原稿の締め切りは発売日の大体1ヶ月前。発売日のタイミングと読者層に合った新作を見つけることが、こんなに大変だったとは!映画配給・宣伝の仕事をすること20数年、ずっと映画評を書いて貰うようにお願いする側で、掲載のタイミングがずれたり、映画がメディアに合っていないと文句ばかり言ってきました。逆の立場を知った今、これまでお世話になってきた全ての評論家やライターさんたちにリスペクトの気持ちでいっぱいです。

仕事の経験上、プロの映画評の書き手はたくさんの映画をマスコミ試写で観て、どれを書くか吟味して決めているのをよく知っています。しかし、本業ではない私にはそこまでの余裕がなく、毎回「これでいける!」と経験と勘で決め打ちして臨み、一気に書いているのが現状です。連載に誘ってくださった編集長の「エッセイ風でいいですよ」というお言葉に甘えて、映画と共に歩んできた人間の視点で、柔らかく書かせて貰っています。連載初回は9月にフィンランドの映画祭に行ったときの話を交えて、アキ・カウリスマキ監督作『枯れ葉』を紹介。2回目は、なかなか日本での公開が決まらなかったのでフィンランドで観た『オッペンハイマー』を、プロが評論する前に、とにかくいち早く書き逃げました。

雑誌は今となってはオールド・メディア。発行部数が減り、休刊・廃刊する雑誌は後を絶たず、メディアとしての価値が下がっているように思われています。学生時代は出版社でバイトをしてましたし、映画を宣伝するメディアとしてずっと重要視してきたので、今の状況に寂しさを感じています。しかし、書き手として雑誌の一部となって関わってみると、入稿から校了までの担当編集者とのやりとり(「連載、好評ですよ!」と励ましてもくれる)からわかる丁寧な制作プロセスや、これは「婦人之友」ならではかもしれないですが、読者(全国友の会の定期購読者多数)との揺るぎない絆に、ネットメディアにはないしなやかさと強さに、これからのメディアのあり方が見える気がしています。

連載3回目では、昨年亡くなった名脚本家・山田太一の小説『異人たちとの夏』を、イギリスを舞台に大胆に脚色・映画化した『異人たち』を取り上げました。追悼TVドラマをきっかけに、山田太一作品を見直した流れで選んだ映画ですが、読者のおばさまたちが興味を持ってくださるか、楽しみでなりません。