こんにちは。今回のフィールドレビューを担当いたします。博士課程の朱です。
少し前のことですが、春休み中に友達に誘われて、あるドキュメンタリー映画を見に行きました。『チョコレートな人々』でした。
最初はこのタイトルってどういう意味?という疑問が浮かびました。調べたら、『人生フルーツ』、『さよならテレビ』、『ヤクザと憲法』などと同じ、東海テレビが制作した番組だと分かりました。
ちょうどその時、プロデューサーの阿武野勝彦さんの『さよならテレビ ドキュメンタリーを撮るということ』(平凡社新書)を読んでいました。タイトルの『チョコレートな人々』から内容がなかなか読めないですが、東海テレビの映画なら多分面白い?と思って、見に行きました。
『チョコレートな人々』はチョコレート専門店である久遠チョコレートを経営している夏目浩次さんとその従業員たちの物語です。他の企業と違うのは、夏目さんは積極的に障害者を雇用していて、かつ彼らに適した仕事環境を作っていることです。久遠チョコレートの従業員の約7割は障害のある人々で、約9割は女性あるいは障害のある人々です。
現在の障害者雇用制度の問題点や、大人数の障害のある人々を雇用する難しさなどシビアなことを説明しながらも、見て苦しくなるような映画ではなく、全体としてすごく軽快な感じで、笑っちゃうことも度々ありました。けど、障害者雇用をめぐる問題点も一人ひとりの従業員とその家族にカメラを向け、丁寧に説明しましたので、「課題」もきちんと伝わりました。
「彼らが仕事しやすい環境を作ればいい」という夏目さんの言葉はすごく印象に残りました。障害のある人々が仕事に向いてないというより、マジョリティである人々がマジョリティのためにだけ仕事環境を作っていたからではないか…と思いました。
また、制作の視点から見れば、この映画のいいところは、20年近く夏目さんを取材したことです。2003年、ベーカリーを開業し障害者雇用を試みた夏目さんは一度大失敗しました。その失敗の物語も当時の取材映像とともにこの映画に加わりました。長い時間をかけて、じっくり取材していくというのは、地域テレビである東海テレビでしかできないことだと思います。
ちょっと残念だったのは、見に行った時点ではすでに監督やプロデューサーによる舞台挨拶が終わり、制作者の心境を直接聞けなかったことです。またどこかで制作者の方々のお話を聞けるといいなぁ…と思いました。
映画はまだまだ公開中ですので、ネタバレを極力避けてこの文章を書きました。
東京では6月24日~30日に下高井戸シネマにて公開される予定です。興味のある方はぜひ見てください!