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雑誌『neoneo』の土本特集

作者: Morita Noriko | 2016年7月25日Posted in: フィールドレビュー

暑い日が多くなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回のフィールドレビューは、修士課程の森田が担当いたします。6月末に発売されたドキュメンタリー専門誌『neoneo 7号』について紹介したいと思います。

『neoneo』は、映画・テレビ・写真・書籍といったさまざまなメディアのドキュメンタリー表現を取り上げる批評雑誌で、自主運営組織によって年に数回のペースで刊行されています。最新号である7号は「ノンフィクション×ドキュメンタリー」と「よみがえれ土本典昭」という二本柱の特集です。私は今回、後者の特集の中で「土本と岩波映画」という短い文章を書かせていただきました。

皆さんは、土本典昭という人物をご存知でしょうか?ドキュメンタリー映画好きの方か、水俣病に関心のある方でなければ、はじめて耳にする名前かもしれません。土本典昭氏は、1970年代から水俣病の患者さんたちを継続的に取材して17本にわたるドキュメンタリー映画を自主製作したことで知られる映画作家です。その活動は2008年に逝去するまで続き、水俣シリーズだけではなく、学生運動、原子力、アフガニスタンなどに関する作品も生み出しました。社会問題に基点を起きつつ、そこに生きる人々の姿を真正面から見つめ、映画にしかできないコミュニケーションを用いて表現し続けた稀有な存在でした。

私は「土本と岩波映画」という小論の中で、土本氏が最初に映画を知った岩波映画製作所というプロダクションでの多彩な出会いをたどりながら、彼がどのようにドキュメンタリーの方法論を磨いていったのかということの一端を考察しました。土本氏の理念とその作品群は非常に奥が深く、私はまだまだ勉強不足であると痛感しましたが、日本のドキュメンタリー映像の歴史を考えるとても良い機会になりました。私の修士論文のテーマは戦時期日本のドキュメンタリー映画製作ですが、土本氏が若き日を過ごした岩波映画製作所の人脈は、実のところ戦時期とつながっているのです。

拙稿はともかくとして、今回の土本特集には『ゆきゆきて、神軍』で知られる原一男氏が土本について語るインタビューや、これまであまり注目されてこなかった水俣シリーズ以外の作品や晩年期をめぐる個性的な論考が収められています。また、もう一つの特集では巻頭インタビューとして新作映画『FAKE』がヒット中の森達也氏が登場するなど、読み応えのある内容です。大型書店にも置いてありますので、ぜひ一度お手にとってみてください。