博士課程の田中です。今回は神奈川県立公文書館とデジタルアーカイブについてご紹介します!
公文書館とは、公的な組織で作成された文書などのうち、歴史的資料の価値を持つ資料を保管・公開する機関です。日本では1959年に山口県文書館が地方自治体による初の公文書館として開館し、1971年に国立公文書館が国による公文書館として開館しました。他にも、政令指定都市公文書館や市区町村公文書館なども存在します。
長洲一二元知事による情報公開
今回、ご紹介する神奈川県立公文書館は、神奈川県知事を5期20年に渡り務めた長洲一二元知事(在任期間:1975-1995)が、内外に開かれた県政の一環として制定した『情報公開条例』(神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例)に基づき1993年に設立されたものです。
神奈川県立公文書館設立の礎となったこの情報公開条例は、全国の都道府県に先駆けて設けられたものです。その意義について、長洲知事は「(人々が)自ら考え、判断をし、構想や計画を練る」(1982.10.27談話)上で極めて重要であると庁内放送を通した月例談話で述べています。人々が集い社会を築く上で、その構成メンバーひとりひとりが主体的に考え、適切な判断と着実な計画に基づき協働する必要があり、そのためには、基盤となる「情報」の保存と共有が不可欠であり、自治体こそ市民に開かれた運営が必要であると提唱しました。
75万点におよぶ資料―デジタルアーカイブやSNSによる配信も―
神奈川県立公文書館は横浜市旭区の5,000坪の敷地に地下1階・地上4階建ての建物がたち、県政に関わる公文書をはじめ、歴史的公文書や古文書、行政刊行物や図書、そして、フィルムや写真、所蔵資料を分析した資料など合計756,662点におよぶ資料が所蔵されています(2019.3.31時点)。
広い閲覧室にはマイクロフィルムリーダーや資料検索用端末機、視聴覚資料閲覧機器などが設置され、許可されたものであれば撮影台で撮影することも可能です。パソコンやカメラの持ち込みも可能で、大きな荷物は入り口もロッカーできます(小銭をお持ちになると良いと思います!)。
また、資料の一部は、デジタルアーカイブ化され、遠隔地からの検索や閲覧も可能です。キーワードで探すこともできますが、「収蔵資料ギャラリー」や「ピックアップ資料」、公式Twitterでは、公文書館の専門家の方々による資料の紹介や解説もあり、非常に興味深いです。
地域の歴史や人々の息遣い
現在、40の都道府県に公文書館が設置されています。そこには、行政機関において作成された文書や取得された文書、さらには、写真や図画などさまざまな資料が保管されていますが、当該地域の郷土資料なども保管される場合もあります。
今回ご紹介した神奈川県立公文書館でも、公文書に加え郷土資料や行政刊行物等も保管・公開されており、神奈川県の歩みやそこに生きた人々の営みを垣間見ることができます。
現在住んでおられる地域やお生まれになった地域の公文書館には、過去に住んでおられた人々の記録と出会うこともでき、その息遣いに触れると、普段気にも留めなかった地域の風景が彩り豊かになります。 お時間があれば是非、神奈川県立公文書館や地元の公文書館、そしてそのデジタルアーカイブを訪れてみてください!