炎上から始まる対話

博士課程の瀬尾です。今回は、会場スタッフとして参加した「第1回メディアと表現について考えるシンポジウム」についてレポートします。

2017年5月20日(土)、「第1回メディアと表現について考えるシンポジウム『これってなんで炎上したの?』『このネタ、笑っていいの?』」が東京大学福武ラーニングシアターで開催されました。このシンポジウムでは、テレビ番組やネット動画上にみられる性、容姿、年齢、独身者などのマイノリティに関する「炎上案件」や「ネタ」について、メディアの制作者、研究者、弁護士の方々の問題提起をもとに、会場を交えた議論が行われました。

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司会の林香里先生(情報学環教授)は冒頭で、「メディアと表現」をめぐる問題については学界の一部の人々の中では常に懸案事項とされてきたものの、一般的な場での議論は難しく後回しにされてきたと指摘しました。そして、このシンポジウムをそのような断絶をなくしていくための場として位置付け、すべての人が表現者となることのできるインターネット時代に「対話」を始めることの重要性を述べました。

当日、ラーニングシアターには200名を超えるたくさんの来場者が集まり、この問題に関して会場から様々な意見が寄せられました。例えば、「女性のワンオペ育児賛美ではないか」と炎上したおむつブランドのCMの話題について、会場の男性からは「何が問題かわからない、母親の大変さを示す素晴らしいCMではないか」との質問が出されました。この質問に対し、登壇者の竹下隆一郎さん(ハフポスト日本版編集長)や小島慶子さん(エッセイスト)からは、「なぜ男性は登場しないのかという批判があった」「CMのオチの『その時間が、いつか宝物になる』の言葉が『だから我慢して頑張れ』に受け取られた」といった説明が加えられました。そして、このやり取りを見た別の女性からは「何が問題なのかを質問をする勇気、そしてその質問を無下にしない勇気が大事だと思った」と感想が寄せられ、「対話」という地道な作業の大切さを実感させられる場面もありました。

竹下さんによれば、CMを制作したおむつブランドの企業はCMの公開を中止にせず、より一層議論が深まるならばこの炎上の問題をどんどん取り上げて欲しいと言ったそうです。メディアのメッセージに疑義を挟まずそのまま受け取るのではなく、逆に「このネタは不適切だ、取り下げろ!」と切り捨てるのではなく、また、そのような批判を恐れて炎上をなかったかのようにするのでもなく、メディアの送り手とその受け手が様々な立場から議論を深め、それぞれの表現にいかしていく。これこそが、メディアの炎上ネタを日常に再生産させないための第一歩なのだと感じました。

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第1回メディアと表現について考えるシンポジウム フェイスブックページhttps://www.facebook.com/Media.Expression.Symposium/