今回のフィールドレビューは博士課程の松山が担当させていただきます。最近、私が『東京人』(2015年3月号)に書かせていただいた原稿について紹介したいと思います。
2015年3月号の『東京人』(都市出版)では、「記録フィルムの東京」が特集されました。東京国立近代美術館フィルムセンターや記録映画保存センター、各自治体などに眠るフィルムを掘り起こし、東京のなつかしい風景を発掘しようという企画でした。
ここで私は(1)記録映画7本の簡単な解説文と、(2)「記録映画とはなにか」という原稿を書かせていただきました。とくに後者は、私が書いてもいいのだろうかと思うほど大きなテーマで、正直、書く前も書いた後も不安でいっぱいであります。ただ、私のような未熟ものが総論を書くことがあってもいいのではないかと開き直り、精一杯書かせていただきました。よければご笑覧ください(場を与えてくださった編集部と丹羽先生に深く感謝いたします)。
私は修士課程より、研究室が進めている「記録映画アーカイブ・プロジェクト」に関わらせてもらっています。今回はその縁があってこの原稿を書かせて頂いたわけですが、正直に言いまして、「記録映画」というものに触れたのは大学院に入ってからが初めてでした。学部の頃から映画を見るのは好きでしたが、もっぱら見るのは劇映画で、記録映画を見たことは数えるほどしかありませんでした。
今でも覚えていますが、入学前に丹羽先生から電話がかかってきて、「こんど岩波映画のシンポジウムがあるので来れる?」と聞かれたとき、「岩波映画ってなに?」と思ったのを覚えています。当時は、「岩波って書店だけじゃなくて、映画もやってるんだ」くらいの認識しかありませんでした。本当にひどい話です。
こんな私が入学後、このプロジェクトの運営をまかされるようになり、記録映画保存センターの方々や制作者の方々とたくさんお話させていただくようになりました。そのなかで、だんだん記録映画の歴史や奥深さを知りはじめました。
このプロジェクトが面白いのは、なんといっても「考古学」的な要素があることだと思います。新しく見つかった作品を見るたびに「こんな映画もあるんだ!」とか「こんな時代もあったんだ!」みたいな驚きと発見がいつもあります。月並みな表現ですが、このような体験は、活字から学んだ知識とはぜんぜん違うものです。私は、この「知識の壊れる瞬間」がいつも新鮮で、プロジェクトから多くのことを学ばせてもらっています。
『東京人』の原稿にも書きましたが、記録映画アーカイブの可能性は、きっともっともっとたくさんあるんだと思います。これからも、その可能性を一研究者として模索していければと思っています。
というわけで、3月13日(金)に行なわれる第3回ミニワークショップのほうも、ぜひよろしくお願いいたします!テーマは関東大震災です。http://urx.nu/hrL9