こんにちは。博士課程の森下です。今年度も終わりが近づき、色々総括する時期となりました。映画産業でいうと、先月28日、日本映画製作者連盟から2025年の年間興行収入が発表されました。2025年は2,744.5億円となり、コロナ禍前の2019年の2,611.8億円を上回って歴代最高記録を樹立。コロナ禍から完全復活した年と位置づけられるでしょう。
昨年いちばんの話題は実写の歴代新記録となった『国宝』(195.5億円で2位)でした。2003年の『踊る大捜査線 THE MOVIE2』以来22年ぶりの更新となり、2000年代から隆盛を誇っていたテレビ局主導製作委員会制からの変化を感じさせます。
先月、某大学の授業で「最近映画館で観た映画は?」と聞いたところ、100人弱の学生のうち『国宝』を挙げたのは2人だけだったのには驚きましたが、3時間超えにも関わらず、シニア女性層のリピート率が高いとか。
吉田修一+李相日の湿度が苦手でも『ばけばけ』と『べらぼう〜』に大ハマりの私は、『フラガール』蒼井優ばりの吉沢亮+横浜流星の努力に熱いものを感じました。ハリウッドの名だたる特殊メイク猛者たちとのオスカー争奪戦に勝てたら、その甲斐があったというものですが。

興行収入の話に戻ると、実は1位の『劇場版「⿁滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は391.4億円と『国宝』の2倍近いことが驚異的です。2019年は『天気の子』(141.9億円)を筆頭とする100億円以上の上位4本(その他3本は洋画アニメ)で計498.1億円だったのに対し、2025年は100億円以上の上位4本(上記2本と『名探偵コナン 隻眼の残像』147.4億円、『劇場版 『チェンソーマン レゼ篇』 』104.3億円)で計838.6億円と約1.7倍に。
全体の興行収入の約30%をこの上位4本が占め、それらを含む上位10本のうち9本が東宝配給(共同配給も含む)であり、東宝1強による独占は邦画と洋画のシェアが逆転した20年ほど前から徐々に常態化しています。興行収入全体の構成をみると、10億円以上の邦画の公開本数は全体の2.9%ですが、興行収入は60.9%を占めており、「少数が多数の利益を生み出している」歪さは前年より際立っています。

出典:日本映画製作者連盟HP 2025年全国映画概況
もうひとつ、面白いデータがありました。「2025年:日本のNetflix【映画】部門ではなにが観られたのか?(松谷創一郎)」によると、日本TOP10(10位が3本あり計13本)のうち、Netflixオリジナルは3本、邦画アニメが3本、邦画実写が4本、洋画実写2本。邦画アニメは『名探偵コナン』過去作2本と『チェンソーマン 総集編』と、興行収入上位とタイトルが被っています。興行に合わせての戦略的配信が功を奏している結果です。
そして、これはNetflixのTV番組・ドラマ部門のデータ(「2025年:日本のNetflix【TV番組・ドラマ】部門ではなにが観られたのか?(松谷創一郎)」)ではありますが、「ヒット作におけるオリジナル割合」をみると、オリジナル割合が50%以下は日本だけ(27.7%)とか。
つまり、Netflixはオリジナルという強みを日本では生かせておらず、TVや映画といったレガシーメディアが強い日本市場の特異性を示しています。新しいメディアが増えても、古いメディアで馴染みのあるコンテンツをめぐって「ぐるぐる」し続けるのが、日本のコンテンツ消費の主流なのでしょう。
また、前年比130.7%となった入場者数が興行記録更新を裏付けますが、映画料金の値上がりやIMAXなど高めの料金設定のフォーマット導入が増えたことも全体的な底上げにつながっています。それは、全国のスクリーン数3,697の9割近くを占めるシネコン(3,305)によって形づくられた数字で、1割弱のミニシアターは含まれていないのも同然です。
昨年末に各地のミニシアターを訪れたとき、「今年入った映画は?」を聞いてみると、いちばん多かった答えは「なかったなぁ」、あとはリバイバル映画でした。興行新記録の陰に潜む状況にも目を向けていく必要があります。