2012年6月22日、東京大学本郷キャンパス工学部2号館にて、テレビアーカイブ・プロジェクト第6回「みんなでテレビを見る会」が開催されました。
第6回は、「8時だョ!全員集合―笑いを支えたテレビ美術―」をテーマに、『8時だョ!全員集合』を上映しました。この番組は、1969年から85年にかけて、TBS系列で劇場や公会堂から生中継され、子供を中心に国民的人気を獲得した伝説的なバラエティー番組です。
『8時だョ!全員集合』は前半にドリフターズによる20分程のコント、後半はゲストの歌、合唱隊やミニコントなどで構成されていました。今回はその中から前半のコントをいくつか選び、1980年にバラエティー番組初となった伊藤熹朔賞を受賞した「歌うお化け屋敷」や、頻繁に放送された定番の「母ちゃんコント」、派手にコントセットが壊れる屋台崩し、実際の車やバイクがセットに突っ込むコントなど、70~80年代ならではの少し過激なコントを上映しました。
上映後は、この番組のテレビ美術をおよそ16年にわたって担当した山田満郎さん(東放学園専門学校テレビ美術科講師)に、お話しいただきました。山田さんはセットの模型を使い、屋台崩しや様々な仕掛けのセットが発想の転換によって作られたことを説明されていました。休みのないハードスケジュールの中で毎週生放送をこなしていたことや、ドリフターズの野暮ったさに合わせた庶民的なセットを作っていたことなど、貴重なお話をうかがうことができました。
また、山田さんは自分のいないところでコントの構成やセットが決まることが嫌だったということで、台本作りから参加していたというお話をされていました。美術の方が台本作りから参加することは当時も今も稀だということからも、山田さんのテレビ作りに対する情熱、テレビ美術そのものへの愛情をうかがうことができました。全員集合のコントはテレビ美術があってこその笑いであったのだと感じられました。
山田さんのお話の中で、「視聴率は気にせず、劇場や公会堂に来てくれる観客たちが笑うかどうかを最も気にしていた。」という言葉が印象的でした。視聴率だけにとらわれず、目の前の観客に笑ってもらえるかどうか。目の前の観客が笑わなければ、テレビの前の視聴者も笑わないという意識は現在のテレビ作りに対しても、非常に示唆的であると感じました。
誰に向けてテレビ番組を作るのか。目の前にその対象となる人々がいたことが、『8時だョ!全員集合』が国民的な人気を獲得した秘訣かもしれないと感じました。
当日は、60名程の参加者にお集まりいただきました。みんテレ初のバラエティー番組ということで、これまでとはまた異なった顔触れの皆様にお越しいただきました。さて第7回の「みんなでテレビを見る会」は、これもまたみんテレ初のテレビドラマの登場です。どうぞご期待下さい。