12月7日(水)、M1の3人によるブックレビュー発表が、ゼミで行われました。これは、丹羽研究室恒例のM1に出される課題で、それぞれの研究に関連する英語文献を読み、その要約などをまとめて発表するというものです。フィールドレビューでも3回に渡って、M1が発表したブックレビューの概要を、紹介していきたいと思います。
まずは、私、瀬尾華子が、ケネス・オズグッド(Kenneth Osgood)氏のTotal Cold War: Eisenhower’s Secret Propaganda Battle at Home and Abroad(The University Press of Kansas, 2006)について、紹介致します。
オズグッド氏は、カリフォルニア大学にてPh.D. を取得し、現在はフロリダ・アトランティック大学歴史学部の准教授として教鞭を執っています。専門は20世紀アメリカ史、アメリカ外交、メディア・プロパガンダ史で、この著作は、その真骨頂が発揮された、オズグッド氏の代表作だといえます。
本書は2部構成になっており、パートⅠはプロパガンダと心理戦の方法や理論について、パートⅡはアメリカが行った心理戦の具体的なテーマやキャンペーン、世論操作について論じられています。そのなかでも私の研究に関係があるのが、パートⅡのチャプター5″Spinning the Friendly Atom: The Atoms for Peace Campaign”です。
このチャプターでは、アイゼンハワーとその下部組織によって、冷戦における原子力の平和利用キャンペーンが仕組まれていく過程を、政治文書、歴史史料に基づいて記述しています。アイゼンハワーは、核軍備縮小の流れを回避するため、巧みにメディアを利用しながら、原子力の平和利用の恩恵と、その主導権を握るアメリカを宣伝していき、原子力エネルギーを利用して発展を望む国々を、戦略的に資本主義陣営に組み込んでいくのです。
さて、このような内容の文献が、私の研究と、どのように関わるのでしょうか。私は、修士論文で、戦後の核意識の全体像を把握するべく、既存の研究が薄い原発PR映画について、アーカイブ研究を行おうとしています。その中で、本文献の流れを踏まえながら、冷戦という構造の中でグローバルに展開する原子力の平和利用が、戦後復興を望む日本では、どのように現地化していったのかということも、明らかにできると思っています。つまり、この洋書は、いわば私の研究の前史に位置づけられるもので、非常に重要な文献であると考えられるのです。
とても読みやすい英語で書かれているので、大学生の方、特に、戦後という時代に興味がある方や、プロパガンダに興味がある方にはおすすめです。ぜひ読んでみて下さいね!それでは今回はこの辺りで失礼致します。