開催報告「原子力発電と安全神話」

2011年10月30日(日)、東京大学情報学環・福武ホールで、記録映画アーカイブ・プロジェクトの第7回ワークショップ「原子力発電と安全神話ー原発PR映画を見る」が開催されました。

前半の映画上映では、「東海発電所の建設記録」(1966年)、「原子力発電所と地震」(1975年)、「海岸線に立つ日本の原子力発電所」(1987年)という3本の原発PR映画が上映されました。また参考上映として、事故前の福島第一原子力発電所を取材し、警鐘を鳴らしたテレビ番組「いま原子力発電は…」(1976年)が併せて上映されました。

ws1

後半の討論では、「いま原子力発電は…」を演出した羽田澄子氏と、出演した物理学者の藤本陽一氏による35年ぶりの対談が行われました。羽田氏は「原発関係者は原子力がいかに安全であるかばかりを語るので、それを聞いて逆に嘘だと思った」と取材当時を振り返りました。藤本氏は科学者の立場から原子力発電が根本的に抱えている数多くの問題点を指摘しました。また情報学環の吉見俊哉氏は「夢の原子力発電」と題した報告で「原子力発電の夢がいつからか原子力発電の安全神話に転換していったのではないか」と問題提起しました。

会場は満員で、原発への関心の高さが伺えました。「原発を通じて国の世論操作の怖さをあらためて思い知らされた」「まさに生き証人といえるお二方を迎え、そのお話を聞きながら映画を考えることができ、貴重な体験ができた」「タイムリーな話題でこのプロジェクトの行動の素早さに感心した」といった感想が寄せられました。

今回のワークショップでは、アーカイブの重要性というものを改めて感じました。これらの映画が保存されていなければ、映画をもとに当時の状況を想像したり、現代の原発を見直したりする機会もありませんでした。ワークショップの参加者が一緒に映画を見て、驚いて唸ったりすることもなかったと思います。また、アーカイブがもっと活用され、過去を見直すことができていれば、安全神話の間違いを正す機会も、もしかしたらあったのかもしれません。

貴重なアーカイブとしての記録映画の上映会を今後も続けていく予定です。次回以降もどうぞお楽しみに。