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山形映画祭オンライン&『文化映画研究』

作者: Morita Noriko | 2021年11月09日Posted in: フィールドレビュー

こんにちは!今回のフィールドレビューは、博士課程の森田がお届けします。ぜひお伝えしたい話題が二つあるため、両方とも紹介させてください(笑)。

1. 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021オンライン開催を体験

奇数年の10月といえば、アジアで最も歴史のあるドキュメンタリー映画の祭典・山形国際ドキュメンタリー映画祭の季節なのですが、世界的にコロナ禍の収束が見通せないなか、今年は熟慮の末に「オンライン開催」という形で実施されました。

正直なところ、山形映画祭は作品鑑賞だけではなく、人と人、人と街の交流が大きな魅力でもあるので、果たしてオンラインでどこまで楽しめるものか、多くのファンの方々と同じく私も未知数だと感じていました。ただ、映画祭スタッフの皆さんの努力がひしひしと伝わってきたため、とにかく積極的に体験してみることに。

7日間で約50本の映画がオンライン公開されるのに合わせて、できる限りスケジュールを空けて臨みました。東京での日常を過ごしながら映画をオンラインで観る時間を確保することは思った以上に難しかったですが、なんとか15本程度の作品を鑑賞でき、リアルタイムで実施された監督のQ&Aにもいくつか参加できました。

そして、作品鑑賞に負けないくらい熱心に通ったのが、山形映画祭名物の社交場「香味庵」のバーチャル版でした。「香味庵」は映画祭に集まった監督から観客まで、誰でもフランクに参加できる素晴らしい場なのですが、これがスペースチャットというツールで再現され、お馴染みの面々と再会することも叶いました。

さらに、オリジナルTシャツやトートバッグから、いつも現地で食べる山形名物の芋煮や日本酒まで注文できるオンラインショップも利用して、開催期間中はすっかり映画祭モードに。SNSで映画の感想やいろいろな情報を共有したり、突然立ち上がるイベントを覗いたりと、慌ただしさは現地開催とあまり変わらなかったかもしれません(笑)。

鑑賞した作品について書き出すと膨大になってしまうので諦めますが、やはりコンペで大賞を獲った『理大囲城』(香港ドキュメンタリー工作者)は非常に面白かったです。香港の抗議運動の拠点となった大学内部でカメラを回し続けた作品ですが、そのテーマの貴重さだけではなく、撮影や編集の素晴らしさに息をのみました。身の安全を確保するため、制作に携わった方々は匿名で参加されていました。

アジア千波万波部門で受賞した『リトル・パレスティナ』も、アサド政権によって封鎖されてしまったシリアの難民キャンプに暮らす監督がその内部の日々を綴った作品で、いずれも厳しい状況の中に置かれている当事者のアクションであるという点がとても印象に残りました。

もちろん、山形の街を歩いて映画館をハシゴして、たくさんの方々とリアルに交流する魅力はかけがえのないものですが、たとえオンライン形式になっても、これまで映画祭が培ってきた柔軟でオープンな精神やムードは着実に生かすことができるのだな、と実感できた7日間でした。

 

2. 戦時期の雑誌『文化映画研究』の復刻版が刊行

今秋、日本のドキュメンタリー映像史研究にとって重要な雑誌資料である『文化映画研究』の復刻版が、アーロン・ジェロー先生のご監修でゆまに書房から刊行されました。

1938年から1940年までの3年間、当時の文化映画プロダクション・芸術映画社の有志が発行していた小規模ながらユニークな雑誌で、その頃の「文化映画ブーム」の内実を確認することのできる資料です。また、ちょうど世界的に注目を集めていたイギリスのドキュメンタリー映画運動を積極的に紹介しており、作り手たちがその製作方法を取り入れようとしていた動向が感じとれるという点も特徴です。

原本の所蔵施設が非常に限られていたのですが、今回の復刻によって、戦時期の映像メディアの状況に関心を持っている方々に広く参照されていくことを期待しています。じつはジェロー先生にお声がけいただいて、私も僭越ながら前座的な解説「芸術映画社の挑戦と『文化映画研究』」を書かせていただきました。なかなか書店には並ばないかと思いますが、ぜひ大学図書館などで探してみてください!