当たり前のことが当たり前でなくなるとき…

みなさまこんにちは。今回のフィールドレビューを担当いたします、修士課程1年の朱です。先日、いつも使っている映画情報サイト(映画.com)のホームページで、ある映画の情報が目に飛び込んできました。1月23日に公開される予定の映画ですが、なんだか見覚えがあるような感じがしました。詳しく見たら、おととし(2019年)に見たNHKで放送されたテレビドキュメンタリーではないか!と、びっくりしました。

今回公開される映画『出櫃(カミングアウト)中国LGBTの叫び』ですが、私はそのテレビ版『ザ・カミングアウト〜中国・LGBTの叫び〜』(NHK BS1, 2019/2/27放送)を見ました。


(出典:パンドラオフィシャルサイト http://www.pan-dora.co.jp/comingout/

ほぼ2年経ちましたが、番組の多くのシーンは今でもはっきりと覚えています。そして映画版の紹介を見たときに、当時この番組を見た後の複雑な感情は再び浮かび上がりました。マイノリティとしてのLGBTの人々の存在は、いまの中国社会の若者の間では徐々に認識されてきました。しかし、彼らを「普通」の人々として受け入れるというのはまだ程遠いです。特に親世代は、LGBTのことを理解するにはまだ難しいです。

多くのLGBTの人々の親は、自分の子どもが同性愛者であることを拒絶しています。それは、必ずしも同性愛者に対して偏見や差別の考えを持っているとは限りません。ただ、親が信じている「幸せ」と子どもが思う「幸せ」の形が違うだけで、そこに衝突が起こる事態になっていると思います。社会環境、教育背景、それまでの人生の経歴など様々な要素が関与していて、異なる背景の中に生活している人々の価値観が違うのがむしろ普通です。

マイノリティへの認知、理解、受け入れには、日々の情報環境が大きな役割を果たしていると思います。その中にも、マスメディアはどのようにマイノリティを扱っているのかについて考える必要があると思います。ドラマや映画に現れる「男女」といった恋愛の形、「夫婦と子ども」といった家族の形に対して、大多数の人々は違和感なく、当たり前だと思っているのではないでしょうか。しかし、それらは「本質」ではありません、あくまで歴史の流れの中に構築されてきた主流的な価値観だと思います。マイノリティのことを認識するには、これまでの「当たり前のこと」をもう一度考え直す必要があります。

最近のテレビを見ると、LGBTの人々を描くドラマは徐々に増えてきているように感じています。ステレオタイプ的なものも見られますが、これまでの当たり前の価値観を完全に放棄して、「当たり前ではない恋愛」をドラマの世界観の中に当たり前のように表現するコンテンツもありました。マスメディアをはじめ、われわれはより多様な視点が含まれた情報に接触することで、これまで構築してきた主流的な価値観を少しずつ見直す可能性があるのではないでしょうか?

いろいろ考えてどうまとめるのかがわからなくなりました…とりあえず、映画館に観に行きます!一度見たことのあるテレビ番組を再び映画館で見るのは初めてです。家に1人でではなく他人と同じ映画館という空間を共有してコンテンツを見るのは、またこれまで感じたことのない感情が生じるかもしれません、その「新しいもの」を求めて、コロナ対策を万全にして映画館に行きます!

参考資料:
テムジンオフィシャルサイト(https://www.temjin-tv.com/works/2019/02/20/1296/ 2021年1月20日確認)
パンドラオフィシャルサイト(http://www.pan-dora.co.jp/comingout/ 2021年1月20日確認)
映画.com(https://eiga.com/movie/94148/ 2021年1月20日確認)