6月
12

ベネッセアートサイト直島に行きました

作者: Kuno Minako | 2018年6月12日Posted in: フィールドレビュー

先日たまたま機会に恵まれて、瀬戸内海に浮かぶ直島と豊島に訪れた。

直島は瀬戸内海にある周囲16km、面積8k㎡の小さな島だ。黄色いかぼちゃが置いてあるアートの島だ、ということは知っていたのだけれど、いつからアートの島になったのか、なぜアートの島になったのかは浅学にして知らずにいた。豊島は、面積こそ直島の倍あるが、人口は直島の1/4程度のこれまた小さな島である。

かつて直島、豊島は産業廃棄物で汚染され、社会から隔絶されていた。そんな孤島群がアートの島に生まれかわったのは、「ベネッセアートサイト直島(basn)」という株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人福武財団が展開しているアート活動によるところが大きい。

福武財団の理事長で、ベネッセホールディンクス名誉顧問である福武總一郎氏。名前からピンとくるかもしれないが、実は情報学環と深い繋がりを持つ人物だ。というのも、情報学環・福武ホールは、福武總一郎氏による寄附に基づき、安藤忠雄氏の設計によって建築されたものなのである。


前置きが長くなったが、今回のフィールドレビューでは、直島および豊島のアート作品と人々の暮らしを簡単に紹介したい。


まずはじめに訪れたのは、李禹煥美術館だ。半地下構造となる安藤忠雄設計の建物のなかに、李禹煥の70年代から現在に到るまでの絵画・彫刻が展示されていた。岩絵具で書かれた抽象画や、映像を石の影となる部分に美しく投影した作品など、静かで穏やかな気持ちにさせられる空間であった。


次に地中美術館に訪れた。地中美術館はその名の通り、たてものを全てが地中に待っていて外側から見えない作りになっている。クロードモネ、ウォルターデマリア、ジェームズタレルという3人のアーティストの作品が展示してあり、ある種のスピリチュアルさを内包した空間だ。

夜は美術館とホテルが一体となった宿泊施設、ベネッセハウスに宿泊した。その周辺にはアーティストたちがその場所のために制作したサイトスペシフィックワークが数多く恒久設置されている。


2日目は、直島から船で15分程度の豊島へ。まず向かったのは、クリスチャン・ボルタンスキーによる「心臓音のアーカイブ」。クリスチャン・ボルタンスキーは人々が生きた証として、心臓音を収集するプロジェクトを2008年から展開している。 ここは、これまで氏が集めた世界中の人々の心臓音を検索し聴くことができる小さな美術館だ。



ここに登録されている人に関してわかるのは、登録した場所とアルファベット表記の名前だけだ。年齢も性別も、さらにはその人が今生きているのかどうかもわからない。自分の胸に手を当てるとき、誰かの胸に耳をくっつけるとき、私たちは心臓の鼓動を確認することができる。


それは、生きて普通に暮らしているときは特に価値もないまったく平凡なものである。日常的でたわいもないもの。しかし、いつか必ず失われてしまうのだ。生の断片が、デジタルな信号に変換されて世界をあてもなくさまよっている、そんな想像を膨らませるものであった。



昼食は島キッチンで、島で採れた野菜をふんだんに使った定食は本当に美味しかった。島キッチンの近くの公民館では、たまたま6月生まれの人の誕生日会が開催されていた。私も6月生まれなので、一緒に祝ってもらった。バースデーカードと写真に、手作りケーキ(¥300)まで用意されてて、こじんまりとしつつも凝っている。



このイベント、面白いのが、こえび隊と呼ばれる瀬戸内国際芸術祭のために発足したnpoの方が主体で開いてる点だ。こえび隊が発足したのは2009年、初めての瀬戸芸が行われる前の年だ。こえび隊が出来て以来、3年に一度の瀬戸芸以外の時期でも島の催しや飲食店、広報を手伝ってるらしい。


地域活性はハレのイベントを盛り上げる以上に日々の営みを長期的にどう支えるかにかかっているのだ、そう感じさせられる出来事だった。