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ゆふいん文化・記録映画祭に行ってきました

作者: Morita Noriko | 2017年7月01日Posted in: フィールドレビュー

皆さん、こんにちは。今回のフィールドレビューは、博士課程1年の森田がお届けします。先週の6月23〜25日の3日間、大分県由布市にて開催された「第20回ゆふいん文化・記録映画祭」に行ってきました。今回は、観客としてだけではなく、一つの上映プログラムの企画者として参加するという機会をいただきました。

「ゆふいん文化・記録映画祭」は、ドキュメンタリーを中心とした文化・教育・科学にかかわる作品の上映やトークショーを通して、自分たちの町づくりを考えていこう、という主旨をもったユニークな映画祭です。同じ場所で8月に開催される「湯布院映画祭」が劇映画を対象とした映画ファンのためのイベントであるのに対して、「文化・記録映画祭」は、より社会的な関心をモチベーションとする地元の方々が集まる場となっています。

今年の主なプログラムは、福岡県出身のアマチュア8mm作家・中山太郎の『博多人形』(1952)『旅役者』(1958)、福山藩阿部家15代当主で気象学者であった阿部正直が撮りためた『富士山 雲の動き』(1929)『雲と気流』(1946)、日本を代表する農村詩人・木村迪夫の活動ぶりを描いた『無音の叫び声』(2015/原村政樹監督)、福岡県出身の作家・林えいだいのモチベーションに迫った『抗い 記録作家・林えいだい』(2016/西嶋真司監督)、東日本大震災で津波の被害に遭った「たね屋」の店主の生活を見つめた『息の跡』(2016/小森はるか監督)など多彩なものでした。

その中で、私が上映させていただいたのは、昨年度の修士論文で取り上げた戦時期の文化映画プロダクション・芸術映画社の2作品『機関車C57』(1941)と『或る保姆の記録』(1942)でした。前者は、当時の最新旅客列車とその従業員の仕事ぶりをダイナミックに撮影した作品。後者は、都内の先進的な保育所での子どもたちと保姆と母親の交流を、日常的な視点から生き生きと捉えた作品。どちらも、戦意昂揚プロパガンダという従来の文化映画のイメージを覆す、普遍的な魅力を持っています。

とはいえ、基本的に戦後の作品群をメインとする映画祭の中で、ここまで年代の古い映画を楽しんでいただけるかどうか不安でしたが、上映中に客席から驚きの声や笑い声を聞くことができ、企画者としてはホッとしました。

上映後には、この2作品と芸術映画社について、トークショーという形で解説させていただきました。私からは主に製作過程や作り手たちのバックグラウンドをお話ししましたが、スタッフや観客の皆さんから、2作品の鉄道史的な重要性や今日に通じる幼児教育の問題などの視点を挙げていただき、私にとって新たな気づきをたくさん得られる貴重な機会となりました。

地域に密着した素敵な取り組みである「ゆふいん文化・記録映画祭」ですが、実は今回の第20回をもって、いったん幕を下ろすそうです。ただし、それは人気がなくなったというような理由からではなく、同じ体制を長く続けない方が良いというポリシーからであり、第11回目の時にも新たな実行委員長を迎えて再スタートしたという歴史がありました。こうしたプロセスを選ぶことも、町づくりを重視してきた「ゆふいん文化・記録映画祭」ならではと感じます。

きっと来年以降、今まで会場を駆け回ってくださっていたスタッフの方々の中から、新たな映画祭の試みが再々スタートするのではないか、と私はひそかに期待しています。美しい山並みと豊かなお湯に囲まれ、地元の人々が元気な由布院の町にまた訪れることのできる日を、楽しみにしたいと思います。