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3.11以前のまちと人に出会う旅

作者: Matsumoto Atsushi | 2017年4月25日Posted in: フィールドレビュー

今回のフィールドレビューは博士課程の松本がお届けします。皆さんは「3.11オモイデツアー」という取り組みをご存知でしょうか。

東日本大震災に関する資料の収集・保存・活用に取り組む草の根のアーカイブ団体、3.11オモイデアーカイブ。そんな上記団体が進めている“被災地”ツアー、それが3.11オモイデツアーです。震災前の暮らし等を市民自ら発信していくことを目的としたプログラムです。

仙台市との協働事業として2013年度の始動以来、仙台市沿岸部で活動する団体や個人とともに運営されてきました。この取り組みは、国内各地で萌芽している「コミュニティ・アーカイブ」の先駆の1つとして注目されており、新聞やテレビなどにも数多く取り上げられています。私もこれまでに3回ほど参加しましたが、その全ての回がユニークで意義深いものでした。

その中でもとりわけ印象に残っているのが、『きょうは市バスに乗って、荒浜へ』です(2016年12月11日実施)。仙台市営バスを貸し切り、震災前と同じ運行ルート(現在は休止)で「深沼海水浴場」停留所まで向かう1日限りのバスツアー。本物のバス停そっくりの"偽"のバス停を制作し、荒浜地区周辺に設置するという制作活動に取り組んでこられた美術作家・佐竹真紀子さんの実践とのコラボレーション企画です。

バスツアーの始点は仙台駅。バスは、仙台市唯一の海水浴場だった「深沼海水浴場」を目指します。

荒浜地区は災害危険区域に指定されており、元住民は転居を余儀なくされています。当日は元住民も途中でバスに乗り込み、沿岸部のかつての居住区に向かいました。

車窓から見えるのは、津波の甚大な被害に遭った荒浜小学校(2016年3月をもって閉校)。震災遺構として保存される予定。

佐竹真紀子さんが制作・設置された「深沼海水浴場」“偽”バス停の前にバスが到着。当日は月命日、読経の声が遠くから聞こえてきました。

荒浜地区に着いたら、まずはみんなで清掃活動。

溶けたオセロの石を拾いました。

清掃活動が一段落すると昼食。元住民の自宅跡地に建てられたロッジで振る舞われたのは、窯で焼かれたピザ。

青空写真館。

午後からは、まち歩き&写真鑑賞会。震災前の町並みが写る写真を1枚ずつ観ていくと、そこにあった暮らしの肌触りを確かに感じることができました。

車窓からの風景を眺めながら、仙台駅に戻っていきます。

「特定のアーキビストによる保存作業に終わらない、みんなで編集しみんなで活用する『記憶を育てるアーカイブ』」に取り組む3.11オモイデアーカイブ。そして、3.11以前のまちと人に出会う旅としての3.11オモイデツアー。そこには、「3.11という日を基軸に復興の様子を伝えるだけではなく、むしろ、それ以前の生まれ育ったまちの風景や、そこに営む人々の想い出をクローズアップさせる」ことで、震災アーカイブの利活用がはじめて可能になるのではないかという問いかけが込められています。

私たちは、この問いをどのように自分ごととして受け止め、共有していくことができるのでしょうか。

言い換えればそれは、かつてを写した記録からもこぼれ落ち、現在の風景にも残っていない、個々人の記憶の中だけに宙吊りにされた風景をどのように再びともに見ることができるのか、すなわち、どうすれば私たちがメディアになることができるのかという問いかけでもあると思います。かつてそこに起きたことを直に経験していない立場の者として、3.12以後のまちと人に出会うことをとおして、この問いを考えていきたいと思います。

あなたも参加してみませんか?

2017年度からは仙台市との協働事業の枠組みを離れ、持続的に運営可能なツアーのあり方を独自に模索され始めています。そのためのクラウドファウンディングを目下実施中とのことです。オモイデツア―に参加したい、オモイデアーカイブを応援したい、もう少し活動を知りたい、そう思われた方は、ぜひコチラをご覧ください。