6月
09

「『放送100年史』を構想する」に参加して

作者: Seo Hanako | 2016年6月09日Posted in: フィールドレビュー

今回のフィールドレビューは、博士課程の瀬尾が担当いたします。少し前の3月のことになりますが、NHK文研フォーラム2016(NHK放送文化研究所主催)の「『放送100年史』を構想する」というワークショップに参加してきたので、そのレポートを書いてみたいと思います。

本サイト上の記事でもお知らせしました通り、このワークショップでは問題提起者として丹羽研究室特任助教の松山秀明さん、コメンテーターとして丹羽先生が登壇され、放送開始から100年になる2025年に向けて放送史をどのように構想するべきかという課題について、来場者を交えながら議論が交わされました。ワークショップには、丹羽研究室から私と修士課程のジン・ギョンアさんも参加しました。

松山さんは、問題提起としてこれまでのNHK、民放の放送史の編み方を「論述式」「分類式」「年別・写真式」に類型化したうえで、「放送100年史」の可能性について以下の3つを挙げました。第一に、これまでの放送史と連続性をもちつつ、新資料をふまえた「放送100年史」、第二に、受け手、番組、メディア、送り手などといったジャンルを設定し、新しい放送史の視点の提示する「放送ジャンル100年史」、そして第三に、紙媒体だけでなく映像資料を含め、新たな検索システムを構築する「デジタルアーカイブと連動した100年史」です。

このような提起を受けて、丹羽先生ともう一人のコメンテーターである社史研究家の村橋勝子さんは、それぞれ番組の映像によってつづる放送史や社史の可能性を指摘しました。さらに、丹羽先生は「番組と普通の人々の精神の交流を重視した文化史・社会史としての放送史」の重要性について、村橋さんは「日本の産業のエンサイクロペディア(百科事典)としてみる社史」の魅力について語り、それぞれの視点で「放送100年史」の構想に関する意見を出し合いました。

また、会場とのディスカッションでは、アーカイブが公開・利用されつつある現代にどのように歴史を取捨選択するのかという問題について触れられ、TBS闘争などを例に挙げて放送の「負の歴史」の重要性について再確認する場面もありました。

私たち丹羽研究室では、NNNドキュメント共同研究というプロジェクトで、民放局及び地方局の番組アーカイブを学術的に利用する試みを行っています。NNNドキュメントの2200本以上の番組も放送100年間の歴史の一部であり、「番組と人々の交流」や、「放送産業との関係性」を認識しながら研究を進めていくことが重要です。そして、ワークショップの中で指摘されたように、放送の歴史を考える上ではNNNドキュメントの光の部分だけでなく、その影となる部分をつまびらかにすることにも大きな意義があると思います。

私自身、研究活動の中で放送局の社史を参考にすることがありますが、これまでの放送の歴史は、残念ながら放送局〇〇周年の記念品のような形で残されがちだったように思います。それはつまり企業PRのための歴史であり、「放送」の一側面でしかありません。このワークショップで感じたのは、これから編む放送の歴史は広く世の中を語らしめるものにするべきだということであり、私もその過程に少しでも関わっていける研究を行っていかなくてはと思いを新たにさせられました。

NHK放送文化研究所 NHK文研フォーラム2016 実施結果報告