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ベトナム反戦体験と脱走米兵の映像記録

作者: Chung Ji Hye | 2016年1月12日Posted in: フィールドレビュー

今回のフィールドレビューは博士課程の丁智恵が担当します。去る1月10日に、神戸の三宮で国際ワークショップ「ベトナム反戦体験から「戦後」日本を問う」(大阪大学大学院文学研究科グローバル日本研究クラスター/青丘文庫研究会)が開催されました。

連休中にもかかわらず、会場は始まってすぐにほとんど満員になりました。はじめに、この企画をされた宇野田尚哉氏(大阪大学大学院教授)から趣旨説明がありました。北爆開始から50年目、ベトナム戦争終結から40年目にあたる2015年に、当時撮影された脱走米兵の映像が公開されました。そして、テレビで当時この脱走米兵をかくまい記録映像を撮影していた小山帥人さんとこの元脱走米兵の再会を描いたドキュメンタリー番組が放送され、話題を呼びました。約50年ぶりに日の目を見ることになった当時の記録映像は、ベトナム反戦体験から「戦後」日本を見つめ直す上で重要であるとのことで、今回のワークショップが企画されました。

(MBSドキュメンタリー映像'16「わが家にやってきた脱走兵〜ベトナム反戦運動・47年目の真実」。詳しくはホームページを参照。ダイジェスト版の動画も視聴できます。http://www.mbs.jp/eizou/backno/150830.shtml

約50年前にこの映像を撮影していた小山帥人さんも登壇されました。当時はメモを取ることも許されないと言われていた彼は、脱走米兵が自宅に来たとき、直感的にこれは大切な記録になると感じ、フィルムで映像を撮影し、会話の内容の一部を録音したそうです。日本でもベトナム戦争に対する反対運動は次第にさかんになっていき、1965年には小田実氏などが中心となり、政党や組合を越えた「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)」が発足されます。また、テレビなどマスメディアでもベトナム戦争に批判的な報道については弾圧が行なわれるなど、当時この問題は日本社会全体に関わる非常に大きな問題でした。小山さんには、当時の興味深いエピソードをたくさんお聞きすることができました。また脱走米兵と小山さんの母親とのやり取りなど、当時の自宅にかくまっていたときに撮影された映像の一部を見ることができ、当時の雰囲気が臨場感いっぱいに伝えられました。

また、当日はほかにも、権赫泰氏(聖公会大学教授)からは、「韓国人密航者・脱走者と日本の社会運動」という興味深い報告がされました。韓国でベトナム派兵を逃れるために日本に渡った韓国人脱走兵たちをめぐる様々な状況や法的問題などについて議論されました。さらに、さいごにはリレートークで元ベ平連こうべのメンバーの方々による当時の体験談が行なわれ、当時のメンバーの飛田雄一氏(神戸学生青年センター)、そして会場に来られなかった多くのメンバーの聞き取りを進めている黒川伊織氏(神戸大学国際文学研究科)からも、当時の神戸における活動について興味深いお話がありました。ベ平連こうべの活動は、ずっと反戦や人権の問題に関心を抱き続け、在日朝鮮人に対する民族差別問題などにとりくむ「むくげの会」へと継承されていったそうです。

会場には、当時の関西における運動の瓦版や雑誌など、貴重な資料が展示されました。60年代から70年代にかけて発行された様々な種類のミニコミ誌。当時の若者たちの熱心な活動の様子が手書きの紙面から伝わってくるようでした。