戦争を伝える展示の在り方

今回のフィールドレビューは修士課程の井波が担当します。2014年11月25日から2015年03月15日まで、イギリス・ロンドンの現代美術館、テートモダンにて、「戦争」「写真」をかつてない切り口でキュレーションした展覧会が開催されました。

「Conflict, Time, Photography」と題された展覧会は、第一次大戦、第二次大戦を始め、アフガニスタン侵攻やイラク戦争など、世界中で勃発した惨事の瞬間の写真とともに、その発生した瞬間…1週間後…1年後…10年後…100年後…経過した時間ごとにセクションに分けて写真作品を展示構成するという画期的な展示でした。

展示されている写真に写しだされた世界には「正義」は存在しない。戦闘による破壊と復興、何世代にも渡る生活の苦しみ、精神的肉体的な痛みと悲しみ。人類の歴史にとって負でしかない様々な爪痕を、俯瞰した視点で見つめ直せる仕掛けでした。

また、荒木経惟、東松照明、川田喜久治、石内都など、日本の作家が多く出品されている点、世界で最も入場者の多い現代美術館で戦争写真が展示されたという点も特徴でした。従来の「戦争と写真」という流れを考えた時、世界報道写真展のようなストレートで生々しい展示を連想してしまうのが一般的ですが、今回のキュレーションはより写真の持つ意味や作家が示したコンセプトを、泥臭くなくかつ効果的に演出していました。

戦後70年。アメリカの首都ワシントンのアメリカン大学では”Hiroshima-Nagasaki Atomic Bomb Exhibition”も始まっています。あらゆる戦争や国際紛争に様々な形で加担しているアメリカやイギリスの本土で、このような革新的であり議論を生みだす展示を敢えて企画したキュレーターの姿勢に心から賛辞を述べたいです。