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NHK文研シンポジウムに参加して

作者: Hasegawa Yutaka | 2014年6月07日Posted in: フィールドレビュー

はじめまして。今回のフィールドレビューは、修士1年の長谷川裕が担当させていただきます。私は情報技術が社会にもたらす影響に興味を抱いており、修士課程では放送と通信の融合における番組制作面での実践がテレビ番組に与える影響を内容分析によって明らかにしたいと考えています。

先日、「NHK放送文化研究所 2014春の研究発表とシンポジウム」に出席したところ、特に最終日の特別セッション「"ソーシャル"が生むテレビ視聴熱?! ~あまちゃん現象が投げかけたもの~」が非常に興味深かったため、その内容を簡単にご報告しつつ、最後に自分の研究テーマについて述べたいと思います。

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今回のシンポジウムでは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年4月~9月放送)について、NHK放送文化研究所が行った世論調査やソーシャルリスニング調査(ソーシャルメディア上の人々のコメントを収集し、調査・分析を行うこと)などの結果を元に、ソーシャルメディアとそこでの発言の特徴及び分析する際の方向性、ソーシャルメディアと共存する時代のテレビ(マスメディア)の機能と役割などについて議論が行われました。

シンポジウム会場のステージは、ドラマに登場するスナック「リアス」を模したもの。小道具やポスターが飾られ、懐かしいあまちゃんの雰囲気に包まれながら議論は和やかに進みました。

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まず私が驚いたのは、あまちゃんは他の連ドラと比べて特別視聴率が高くなかった、という事実です。あまちゃんは新聞記事掲載率を見ても前年度「梅ちゃん先生」の6.5倍の多さであり、テレビ番組で取り上げられた回数も3.9倍、マスコミで非常に沢山取り上げられ話題になったにもかかわらず、視聴率は伸びなかった。そのため視聴率といった量的な調査の限界があるのではという問題意識から、視聴の質的な側面に関する報告と議論が行われました。

特に質的な側面での分析としてソーシャルリスニング調査(今回の分析対象は主にtwitter)を行い、そこから

  • テレビの視聴行動そのものがコンテンツ単体で完結するというよりも、そのコンテンツの周りを取り巻いている役者さんやスタッフに関することまでがソーシャルで届き、トータルで引き受けて消費できるものになりつつあるのではないか。
  • 今まで見えてこなかった「愛され層」のようなものを掘り起こすことが可能になったことで、今までの視聴行動の中では機能していたエンターテイメントが、ユーザー主導で送り手の意図とは違う見方をされてしまうことに制作現場は苦悩があるのではないか。

等、興味深い問題提起がなされ、パネリストの方々が議論を深めていきました。

また私が面白いなと感じたことは、ソーシャルと相性の良い番組はお茶の間的空間を再現するのではないかという議論です。

鈴木謙介(以下、鈴木):不思議なことに、これだけ生活時間が多様化して、放送もオンデマンドで見ようと言う時代に、気づけばみんな「早あま」(注:ネットから生まれた造語。総合テレビ8:00からの放送を「朝あま」と呼び、BS7:30からの放送を「早あま」と呼んだ)からずっと見ている。

藤田真文(以下、藤田):リアルタイムの時間に見ている。

鈴木:かつてのテレビがお茶の間で持っていた機能を、回復したと言えそうです。朝、テレビをつけるという行為が習慣づけられ、それがテレビの前にいる人達の共通の話題になる。そういう機能がドラマでもあり得る、という体験を提供した可能性はありますよね。

司会:ソーシャルが出現したことで、テレビが再評価されているということでしょうか。

藤田:時間を共有する良さを、視聴者が再び実感し始めたのでしょう。スポーツ中継のように、生で見て同じ時間を共有できるのがテレビのメディア特性でした。そして今、生で見ていることを視覚化出来るソーシャルメディアが現れました。その両方を操作して時間を過ごす人がいるということが、テレビの本来のメディア特性を掘り起こし、再評価することに繋がっていると思います。

鈴木:テレビが、街頭テレビで力道山を見ていた時代に戻るのでは、とソーシャルメディアの時代の世界では言われます。そのとおりだと思う一方で、やはりソーシャルと相性の良し悪しはあると思います。ドラマや報道のようにリアルタイムで次どうなるかわからないものはソーシャルと相性が良いのです。しかしバラエティー番組、例えば往年の「8時だヨ!全員集合」のように、毎週同じネタをやるものは相性が悪くて、DVDなどのパッケージを買えば良いという話になりますね。(放送文化研究所, 2014, 「2014年 春の研究発表とシンポジウム 特別セッション"ソーシャル"が生むテレビ視聴熱!?」『放送研究と調査』64(6): 9.)

お茶の間の復活というと、家族一家団らんの中心にあるテレビといったものを想像してしまい、私は少し違和感を覚えてしまいますが、それでもこの議論の中で提示された「生活習慣が多様化する中で現れたテレビを通した時間の共有」というのは興味深い動きだと感じました。

今回のシンポジウムのパネリストである社会学者・鈴木謙介さんは、「ソーシャルと相性の良いものはドラマや報道のようにリアルタイムで次にどうなるかわからないもの」と仰っていました。ドラマに関するものは今回のあまちゃんを通して多少議論が進んだと思います。

しかし、報道番組はどうでしょうか。報道番組研究にはそれなりの蓄積があり、特に娯楽化に関しては数多くの研究がなされてきましたが、こういったソーシャルとの連動というものはこれまで事例が少なかったこともあり、今まで研究はなされてきませんでした。しかしNHK NEWS WEBを皮切りに、最近の事例では、今年4月からTOKYO MXがモーニングクロスという報道番組で、画面下部分のツールバー上でツイートをスクロール表示するTwitter連動を行うなど、民放各社も報道番組において通信との連携を積極的に深めています。

はたしてソーシャルとの連携は報道番組に何をもたらすのでしょうか。これからの修士2年間では、この報道番組とソーシャルの関係について考察していきたいと考えております。実りある研究生活が送れるよう、丹羽研究室で精一杯努力していく所存です。

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