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『アナと雪の女王』を見て

作者: LU ZIMENG | 2014年5月15日Posted in: フィールドレビュー

みなさん、こんにちは。今回のフィールドレビューは、研究生の盧梓萌が担当させていただきます。ゴールデングローブ賞、アニー賞、アカデミー賞を受賞し、全世界で約10億ドルの興行収入を突破したディズニー映画『アナと雪の女王』(2013年米国公開)は日本でも大ヒットし、最近では社会現象を巻き起こしています。今回は、この映画について少しお話したいと思います。

ディズニー史上初めてダブルヒロインが登場した本作は、姉妹であるエルサとアナをめぐっての真実の愛の物語を描きます。この真実の愛とは、一体何か。その解釈は、人によって様々です。最も有名な劇中歌『Let It Go』の《ありのままの自分でいい》という解釈に合わせて、同性愛をテーマとした作品とみなす人も少なくありませんが、ツイッターでの「エルサはゲイなのか」、「『Let It Go』はカミングアウトの歌か」という質問に対して、脚本家であるジェニファー・リー氏は「Think this is best left unsaid(言わないままにしておくのが一番)」と答えました。

私からすれば、映画のテーマが同性愛であるかないかということは重要ではありません。私は、エルサのもつ生まれつきの氷の魔法の能力を、同性愛や身体的、または精神的な障害などの隠喩として見なしてもいいと思います。ただ、私にとって重要なのは、女性の自己救済がテーマとなっているということです。

エルサが持っている氷の魔法は生まれ持った特徴でしかないのですが、この特徴のために彼女は子供の頃から恐ろしい化け物のような存在に見なされていました。自分の本当の姿を隠すべきだと言われ続けたエルサは、ずっと自分自身に立ち向かう機会を得られませんでした。そして、エルサが氷の魔法をコントロールできなくなった時、ついに彼女の自分に対する恐怖感は変質します。彼女は、現実から逃げるという道を選んでしまうのです。

このように姉のエルサのイメージが消極的である一方で、妹のアナのイメージは積極的です。アナはいつも明るくて太陽のような存在であり、愛を求める勇敢な女性です。こんな彼女だからこそ、何があってもエルサを信じ、何があってもエルサを助けに行きます。そして、彼女たちはお互いの運命の中で欠かせない存在になっていきます。

この映画の中で、プリンセスを救うのはプリンセスです。ストーリー全体を振り返ると、男性キャラクターのハンス王子が悪役で、山男クリストフが脇役であるということがわかります。この視点から見れば、『アナと雪の女王』は今までのディズニープリンセス物語とは全く違うスタイルであり、フェミニズムの傾向が顕著に見られる特徴的な作品であると言えるでしょう。

1937年米国公開の『白雪姫』を原点として、約80年後、ディズニーのプリンセスたちは遂に「自分の人生を自分で決める、救う」ということを覚悟しました。同時に、王子というキャラクターは救済者から悪人に変わりました。フェミニズム運動の発展とともに、ディズニープリンセスたちは女性の自己解放を妨げるのが男性である、と意識し始めるのです。

初期の白雪姫、シンデレラとオーロラは伝統的なプリンセスであり、温柔でピュアな女性イメージに基づいて作られたキャラクターです。この時のプリンセスは、女性としての自己解放がまだ起きておらず、彼女たちを救うのは王子でなければならないという設定であることが容易に窺えます。それゆえ、男性からの贈り物(キス、ガラスの靴など)は、女性の幸せへの鍵として解釈できます。ディズニーは1989年米国年公開の『リトル・マーメイド』にも、再びプリンセス物語を題材として取り上げています。この物語では、人魚姫アリエルが自分の身柄を賭けて、様々な困難を超えて恋人と結ばれています。

しかし、その後の『美女と野獣』(1991年米国公開)ではインテリであるベルが野獣と恋に落ちる物語となり、さらに『ムーラン』(1998年米国公開)では、主人公ムーランが父に代わって男装で従軍し、戦闘時には大活躍する物語となって、フェミニズムの傾向が大いに反映されてゆきます。大功を挙げたムーランは帰郷し、家族の誇りと愛情をもって迎え入れられます。儒教の価値体系のもとで貶められた女性の価値が、とうとう20世紀の終わりに証明されるのです。

それ以来、ディズニープリンセスたちは女性解放意識を喚起し始めました。自分の店を開いてもいい(『プリンセスと魔法のキス』(2009年))、母と娘の関係を改善してもいい(『メリダとおそろしの森』(2012年))、あるいは今回の映画のように姉妹の絆を深めてもいいのです。ここで注目すべき点は、女性と女性、及び女性と世界の関係が映画の中心として強調されるということです。女性と男性の恋が中心から外され、女性は婚姻と家庭の束縛から解放されて、自分のためにより一層奮闘し、夢を追いかけ始めるのです。

映画自体の話に戻りますが、もう一つ興味深かったのはクリストフがアナから「知り合いになったばかりの人と結婚するつもりだ」と聞いた後に言った言葉です。「You got engaged to someone you just met? Didn't your parents ever warn you about strangers?(君は今あったばかりの人と結婚するつもりなの?君の両親は見ず知らずの人には注意しろって言わなかった?)」これは、伝統的なプリンスとその恋を描くプリンセス映画のいわゆる「一目惚れのラブストーリー」に対する諷刺ではないでしょうか。

映画の中では、最後にアナが自分を犠牲にしてエルサを助けるという行動をとりますが、これは真実の愛の描写であると解釈できます。それゆえ、これで女性の自己救済が完結します。時代とともに進歩しつつあるディズニー映画はこれからどんなプリンセスを生み出すのか、女性がどのように位置付けられるのか、私はとても楽しみにしています。